論点(5)国有林の伐採は民間で

「南日本新聞」平成16年(2004年)5月24日掲載


 林業では間伐は非常に大事な作業であるが、戦後一斉に植林された森林が、また一斉に間伐の必要な時期になってきた。最近世間的にもよく話題になってきている。

 間伐の必要性は野菜づくりになぞらえるとわかりやすい。種まきを収穫時の適正本数よりも多めに行って、成長に従って次第に間引いていく。手間はかかるが、良い作物を作るには不可欠な作業であり、間引き菜も使える。林業ではこの間引きのことを間伐と言い、間引き菜が間伐材である。

 間伐材は物不足の時代には大変貴重で、間引き菜であって副産物だから値段も割と安く、足場材や比較的小規模な建物に重宝されたので間伐は滞りなく順調に行われていた。ところが皮肉にも、大面積の森林が間伐期に至った時期に経済や社会情勢に重大な変化が起こり、間伐が進みにくい状況になった。なすすべもないかのように輸入材の流入が始まり、材料革命と呼ばれる現象さえあった。

 林業側労働者の不足も重なり、植栽から収穫までに何回か必要な間伐が行われず、間引きしない大根畑のように、森はいたずらに茂り傷んでいく。国や自治体も補助金を出すなど一生懸命推進を図っているようだが、なかなかはかどらないのが実態だろう。ここまでくれば、ニュージーランドなどが実施した間伐作業の少なくても済む林業の研究などは、すぐにも検討に取り組むべき宿題だろう。

 わが国の林業は小規模である。年間一万立方メートルを超える素材生産業者は全国でも五十を超えない。林業の問題点とされているコスト高、担い手不足などは、林業固有の問題点というよりは、その規模が零細であるが故なのではないか。

 欧米の木材輸出国では丸太の供給を担っている林業会社は巨大である。資料が古いがフィンランドでは年間一千万立方メートルもの丸太を生産する会社が四社あるという。国産材丸太の年間生産量が一千八百万立方メートルであることからしてもすごいことだ。そこでは林業といえども先進産業並みの生産性を誇り、生じた利潤を事業の長期継続のため設備や技術開発のみならず再造林にも再投資している。

 九州で最もコストダウンの進んだ経営者の一人といわれる人吉市の泉林業社長の泉忠義氏は言う。「素材生産の近代化のためやるべきことはやってほぼ実現してきました。現在残る最後で最大の課題は伐採する山の安定確保です。山主さんを一軒一軒回って伐採を勧めますが、手間がかかりコストダウンや規模拡大はこれ以上は困難です」。林家に少しでも多くの手取りをと言って実行している泉氏でもこんな状況である。

 経済同友会が2003年2月に発表したリポート「森林再生とバイオマスエネルギー利用促進のための21世紀グリーンプラン」ではヨーロッパ林材業の隆盛に対する森林組合の貢献を高く評価している。全国的なシステムとして、組合員の森林状態をくまなく把握、計画的な施業計画や収支見通しを提案し、林業会社を通じ実行する。永年培われた相互信頼性のもとに作業が着々と実施されるので、林家の収入も保証され再造林もうまくいくという善循環が成立している。わが国同様、比較的小規模所有ながらも国際的競争力を維持している最大の要因だ。

 このリポートをまとめた富士通総研経済研究所の梶山恵司氏は経済・金融の専門家だが、欧米やわが国の林業をつぶさに調査した。同氏は森林組合はヨーロッパ型をモデルに現行事業を見直し、ソフト機能を強化すれば大きな変革が生まれると指摘している。

 もう一つの参考例として北米で行われている「伐採ライセンス」を提案する。民間林業会社と国・州有林が長期の伐採契約を結ぶ。伐採量に応じ立木代を払い、伐採後は植林して返還する。ウェアハウザー社は五百万ヘクタールのライセンスを受けて、自社有林二百五十万ヘクタールと合わせて世界最強の林産業を形成している。

 日本型伐採ライセンスシステムを確立できないものか。例えば一地区一万ヘクタール程度の国有林を信頼と能力ある業者・団体に立木代、再造林など取り決めてライセンスを付与する。国有林は全森林の三割を占めるが、その高度活用は国の収支にもプラスに働くだろう。

 私の試算では一地区一万ヘクタールで百数十人の安定的雇用の創出が可能である。この効果は民有林の活性化にも波及するだろう。地域おこしの起爆剤として、国有林と民有林両方の活性化を心から願うものである。

(代表取締役 佐々木幸久)