メールマガジン第99号>稲田顧問

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★【稲田顧問】タツオが行く!(第55話)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「これまでのタツオが行く!」(リンク

55.ジェームズ・ラブロック氏の警告 

 ネットニュースで、英国の環境科学者ジェームズ・ラブロック氏が7月26日に逝去されたとの報道を目にした。享年103歳とのことである。ラブロック氏は、「ガイア理論」を通して、地球温暖化の脅威を世界に発信したことで知られる。

 2006年に出版された「ガイアの復讐」によれば、人類が温室効果ガスの排出を大幅に削減しなければ、2060年には人類が居住できる空間は南極の一部に限られるようになる、とのことであった。人類は既に破滅に向かってのブラックホールを落下しつつあり、地球温暖化を回避する唯一の現実的方法は、原子力エネルギーの活用しかないと述べている。ラブロック氏の2006年の警鐘は純粋に科学的根拠に基づくものであり、極めて説得力のあるものであったと理解している。

 

 一方で地球温暖化説は真実では無いとする懐疑論もまた、多く耳にする。その一つとしては、温暖化阻止に関わる様々な事象、例えば「原子力エネルギー、太陽光パネル、電気自動車」等の背景には巨大な利権構造が存在することから、地球温暖化問題を企業ぐるみあるいは国家ぐるみの陰謀として捉える見方がある。

 同様に、公共がSDGs、カーボンニュートラル化推進に向けて創設した膨大な助成事業自体を新たな利権構造として捉え、その胡散臭さを指摘する向きもある。

 

 このように両論が相対立する中で、我々はどのように振舞うべきかということになるが、私としては、最近頻発する豪雨災害や急激に巨大化する台風の動き等を見ていると、気象の変化の過激化が顕在化していることは明白なように思われる。

 地球温暖化の問題が、ラブロック氏が警告するように、一旦問題が生じたら取り返すことは殆ど困難な問題とするならば、CO2排出を極力抑えるための努力を怠らないことは、人類共通の課題と認識すべきと思われる。

 

 豪雨災害と言えば先日、2020年熊本の大水害で壊滅的被害を受けた人吉の温泉旅館「清流山水花あゆの里」を訪れた。丁度2020年豪雨災害の2週間前にも、同じ旅館を訪問していたのであるが、水害以降約1年以上の休館を経て、昨年秋やっと復活したとの報道を目にしていたので、恐る恐るではあるが行ってみることにしたのである。

 旅館の窓から撮影した球磨川の風景を添付しておく。写真で見る限り、穏やかな田舎街の風景であるが、2年前には川の水位が橋の高さを遥かに超えて、老舗旅館の2階まで水没させ、平和な街を破壊してしまったのである。「あゆの里」は確かに立派に復活を遂げたが、隣のビジネスホテルは災害の爪痕を残したまま、放置されたままである。

 街中を観光目的で歩いて見ても、随所に存在する空き地や、壊れたままで放置された店舗などが、災害の深刻さを伝えている。SLの観光列車で人気を集めた人吉駅もJRは運休したままであり、未だ復活の兆しも見えない。駅前にはプレファブの復興商店街が軒を並べているが、仮設の店舗で復活を目指す町の人々の逞しさと、厳しさを感じてしまうのも致し方無いことのように思われる。

 

 そして最近のニュースを見てもこのような災害は、今や日本の各地至る所で日常的に起こっていることのようである。地球温暖化に伴う気象の変化の問題は、既に顕在化しつあることをひしひしと感じるが、この問題に如何にして立ち向かうべきか、真剣に考えなければならない状況に立ち至っていることは間違い無いようである。

 

(稲田 達夫)