メールマガジン第95号>部室長挨拶

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★部室長からのメッセージ     製造部 部長 笹原利文

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 4月に入りますと、学校、官庁関係・民間企業など多くの人が年度替わりで入学、異動や引き継ぎなど一年の中で最も慌ただしい時期となります。山佐木材は5月からが新年度のため、4月は令和3年度締めの月であり、同時に4年度へ向けて経営計画を固める月でもあります。社内各部門では、3年度の反省点・新年度の課題、それぞれを解決するために具体策の検討を進めているところです。

 

 さて、3年目を迎えたコロナ感染状況をみると、第6波も2月終わりごろから1か月ほど緩やかな減少が続いていたものの、ここにきて感染力の強い『BA.2』への置き換わりが進み、10代20代の感染や飲食店での感染が増加しているようです。鹿児島県でも検査の陽性率が上がっていることなど、リバウンドの兆候が見え始めています。

 社内でも今一度ワクチンの追加接種を着実に実施することや不織布マスクの正しい着用、消毒や換気、密を避けるといった対策の徹底を周知しているところです。

 

 また、ここ毎日報道されますロシアによるウクライナに対する軍事侵攻。こんなことがこの時代に起きるのかという衝撃ニュースの連続で、心を痛めている方も多いのではないでしょうか。あまりの情景と悲惨さに言葉に出来ませんが、何よりも、一刻も早くこの戦争が平和的に収束すること、そして戦争を通じて悲しむ人、亡くなる人が1人でも少なくなるよう祈っています。

 

 こんな暗い情勢ですが、弊社で2015年から継続して試験しております、「ホウ素系保存剤を含む木材保存試験」について今回ご紹介したいと思います。

 


「試験報告書から抜粋」

☆2015年11月に弊社所在地に近接する、東串良町柏原海岸付近の国有林内にてシロアリ試験地を設置。

(写真 Fig.1 Fig.2 Fig.3)

 試験地に関しては、その際、国有地借入、様々な指定等の解除など、イエシロアリの食害がみられる区域を選定、下刈り、除伐等の整地、借用地範囲の区別化を行った。

 なお、試験に関しては、当時、鹿児島県森林技術総合センターに在職中の森田慎一氏のご指導に賜った。2016年以降からこれまでに1年に1回の定期調査を実施している。(写真 Fig.4)

           Fug.1 整地前の試験地状況                       Fig.2 試験開始状況(A地点)

 

           Fug.3 試験体設置状況(C地点)                     Fig.4 定期調査の状況

 

 試験体は、JIS K1571:2010「木材保存剤 – 性能基準及びその試験方法」に規定されている木材保存剤の防蟻性能のうち、野外試験(表面処理用)に用いる30×30×150mmの試験体と(写真 Fig.5)、長さ1mの12cm角材を薬剤処理した後、任意の一端から中央部まで連続して20cm弱の長さに切断した各3本の試験体を用いた。(写真 Fig.6)

 ホウ酸系薬剤では山佐木材でも使用中の八ホウ酸二ナトリウム四水和物(商品名:ティンボア)、濃度10%と15%にて注入処理を行い、比較対象としては無処理材と、銅・アゾール化合物系防腐薬剤(CUAZ)処理材とを準備した。

           Fug.5 30㎜角試験体の設置状況                    Fig.6 120mm角材の試験体の設置状況

 

 使用した樹種は、国産スギ、ヒノキを主体とし、国産マツ、ベイツガ、ベイヒバ、ベイマツ、及び一部、設置条件での試験用のホワイトファーと、樹種特性も兼ねて設置を行った。

 試験区としては大きく3工区に分け、AとB工区が30mm角材、C工区が120mm角材の設置となっている。

 最後に、本試験において、ホウ酸系特有の木材内部への薬剤拡散が及ぼす影響、注入処理5年後以降の他薬剤との効力比較化について良い結果が得られることに期待している。

 


☆CLT土木利用を目的とした試験

 2020年度全国木材協同組合連合会「外構部の木質化対策支援事業(企画提案型実証事業)のうち床CLT構造材の木造橋耐久性向上技術の開発」により、鹿児島県庁内木橋の架け替え工事が進められた。

 この事業の進め方については、令和2年10月に開催された第1回委員会の中で、保存処理方法として、ホウ酸系薬剤(DOT水溶液)と樹脂系ラッピングの併用で行うことが承認された。相性確認試験についても実施した。

 山佐木材内では、別途、同条件にて塗布処理を行い、ホウ酸系保存剤の利用拡大に向けた試みとして、併せて試験した。(写真2.8.3K、L)。

 

       写真2.8.3K ティンボア水溶液塗布状況 1回目               写真2.8.3L ティンボア水溶液塗布状況 2回目

 

 試験体の構成は、Mx60-5-5 使用環境B、サイズは150mm×150mm×525mmにて成型を行い、樹種はスギである。DOT溶液は温水溶解の濃度15%程度とし、刷毛塗りの風乾確認後に2回目塗布を行った。

 

引用文献

1)JIS K1571:2010木材保存剤-性能基準及びその試験方法

2)森田慎一,笹原利文,西園靖彦,佐々木幸久:ホウ素系薬剤処理木材の耐蟻性試験、木材保存、

   公益社団法人日本木材保存協会,2020 Vol.46 No.6(2020)

(製造部長 笹原 利文