メールマガジン第60号>社長連載

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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(27)

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本格焼酎の出荷量

 8月31日付け南日本新聞の地域経済欄に、昨年度県産本格焼酎の需給関係に関する鹿児島県酒造組合(濱田雄一郎会長)の発表内容が掲載された。

 

私の興味本位でその記事を要約してみる。

1.出荷量は県内本格焼酎メーカー113社のもの。

2.出荷量は5年連続減少した。 

3.出荷量は連続4年、宮崎県に次いで2位。

4.鹿児島県の出荷量 10.9万KL(前年比5.6%減) うち芋7.9万(72%)

  宮崎県      12.9万KL(前年比9.2%減)    10.6万(82%)

※鹿児島県の芋焼酎の比率が宮崎県に比べて低いのは、鹿児島県では黒糖焼酎メーカーが頑張っているからと思われる

5.鹿児島県出荷量のうち首都圏向けは2.5万KL

   これは、全出荷量に対し23%を占める。

   なお、この出荷量は前年比3600KLの減少で、14%減となる。

 

 同組合濱田会長は「首都圏以北の需要拡大に努める」と述べたと記事にあった。

 

東京で呑む焼酎は無茶苦茶高い

 8月上旬、都内の高級中華料理店でご馳走になる機会があった。ビールや白ワインを飲んでいたが、鹿児島の人だからと芋焼酎を勧めて下さった。見ると銘柄は名酒「一刻者」。

 銘柄に不足はなく、お勧めに従い喜んで戴こうと思い、ふと値段のところを見て目を剥いた。お湯割り一杯1450円、そして括弧書きで「60ml」と書いてある。

 焼酎をお湯割りにして呑むのが、1年を通して私の流儀である。60mlの焼酎を一合のお湯割りにするには120mlのお湯を足すことになる。鹿児島流の言い方で言うと、おおよそさんなな(三七)くらいで、これはさすがに少し薄い。六四か七三にするには、2倍の120mlの焼酎にお湯を足す。25度の焼酎はおおむね日本酒のアルコール濃度とほぼ匹敵する。濃厚な中華料理にも釣り合うと思う。ただそうすれば1杯1450円の焼酎は、突然2900円に変わる。

 一刻者は名酒ではあるがそんなに高くで売られているものではない。鹿児島だと5合瓶(900ml)でせいぜい1500円、1升瓶(1800ml)で3000円切るくらいのところか。

 心の中で密かにそろばんを弾く。一升瓶で30杯、メニューの一杯値段を掛けると、何と1升辺り45000円近くになるではないか。

 勢いで一杯だけは注文(60mlで)したが、ご馳走になりながらも貧乏性の性か、なめらかにのどを通らない。そのあとはワインで通した次第である。

 

 だいたい東京ではいつものことだが飲み屋で出す焼酎の値段は理不尽と強い違和感があって、焼酎を注文することは殆どない。心ならずも純米酒などで通すものだから、東京出張時はいつも2、3キロ太って帰ることになる。鹿児島県人、あるいは鹿児島県で過ごしたことがある人(多分焼酎愛好家になっている)は、東京の今の値段では決して手を出さないのではないか。

 

「一刻者」の由来

芋焼酎作りには昔から米麹は不可欠であったし、今でも本格芋焼酎の殆どは米麹とさつま芋で作っている。

 その米麹をあえて使わず、鹿児島県の産官学連携により、芋で麹を作ることに成功、当時随分と話題になった。この焼酎は敢えて芋だけにこだわる、ということで鹿児島でも今もよく使われる頑固者、一徹者を表す言葉である「一刻者」というブランドが与えられた。この技術を用いて、同じブランド名で数社が商品を作っていると聞いている。

 

大海酒造見学の思い出

十数年前だろうか、大海酒造(協)※の工場見学をさせて貰った。当時理事長の山下さんに直接ご案内戴いた。※現在は株式会社

 

 「この工場で1日当たり、米麹8トンとさつま芋20トン使います。これで1升瓶1万本出来ます。さつま芋は季節ものなので、シーズンオフには麦焼酎を造ります。こちらは米麹は同じく8トンと麦8トン、これで同じく1升瓶1万本が出来ます。」

 今は亡き山下さんは温厚な方で、諄々と説明して戴いたのをその風貌と共にありありと思い出す。

 麦はオーストラリア産が一般的に使用されていて、この麦と芋とは1トン当たりでほぼ等価であるそうだ。つまり同じ量(1升瓶1万本)作るのに、同量の米麹の他に、芋は20トン必要で一方麦は8トンでよいと言うことだ。芋は生もので麦は乾物、と言えば良く分かる話ではあるものの、芋焼酎はコスト面ではなかなか大変なのである。

 

 先月号の本欄で「昔の焼酎は臭かった」と書いた。今の焼酎は香りはあるが臭みはまったくない。これは焼酎用麹の改良と、芋の磨き方による。それを大海酒造の生産工程を見て納得した。良く洗った黄金千貫(こがねせんがん=焼酎用のさつま芋の品種)の大きな芋を1個ずつ、良く切れる専用の包丁で、傷んだところをばさばさと切り捨てているのである。

 (代表取締役 佐々木 幸久)