メールマガジン第12号>役員挨拶

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★役員からのメッセージ  

どう向き合うか 既存商品と新商品  代表取締役 佐々木 幸久

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「住宅向け」と「非住宅向け」

当社の木材ビジネスの事業分野は、「住宅向け」と「非住宅向け」とに分類されます。そしてこの分野において商品の柱として製材、集成材、建設の3つがあり、それぞれの商品に対応する3つの部署で事業を担い、併せて(協)きもつき木材高次加工センターがそれぞれの部門を支えています。

全社売上に占める二つの事業分野の売上比率は年によって変わります。平成24年度は非住宅向けが多く、25年度は住宅向けが多く、現在進行中の26年度は非住宅向けがかなり多くなると思われます。

今後も社会情勢や国の経済政策によって、売上総額も上がったり下がったりしながら推移していくだろうと思いますが、二つの事業分野を持っていることで、売上減少のリスク回避に役立っていると思います。


非住宅の木造建築ブーム

非住宅向け事業は、平成2年に工場作りに入って以来既に25年目になります。

この事業のスタート時に、城山観光ホテルの保社長(レストラン「ホルト」)、佐多町の黒木町長(統合中学校校舎)、開聞町の松山町長(「唐船峡」)、高山町の有留町長(屋内ゲートボール場)など、新しいものに挑戦するのが大好きで決断力に富んだ個性的な方々と出会え、建物が超速球で実現したことは実に幸運でした(町名、社長様、町長様共に当時)。

また鹿児島県の後押しもあり、これら4つの建物が幸い好評で、その後県下で木造建築ブームと呼んでも良いような現象が起こり、数年間文字通り倍々ゲームで売上が伸びました。

時が経ち早すぎたブームが去るのもまた早く、次第に需要が減ってきました。しかもちょうど頂点を過ぎた頃に新しく同業2社の参入があり、当社も次第に売り揚げが減ってきました。宮崎県の林業振興政策の目玉として誕生した1社は別格としても、当社ともう1社はチキンゲームの様相に至りました。

思いもかけない姉歯事件の発生、追っかけて翌年は世界的不況の元になるリーマンショックが勃発、住宅向け、非住宅向けともに深刻な需要縮小に陥りました。同業2社も厳しい事態は当社と同様であったらしく、相次いで工場を閉鎖しました。今考えても、あの時は当社が先であってもおかしくなかったと思います。

城山観光ホテルのレストラン「ホルト」
城山観光ホテルのレストラン「ホルト」


景気の波の谷を経験して

住宅事業の景気の波、非住宅事業の景気の波は通常一緒ではなく、多くは交互に来ます。しかしまれに波の山や谷が一緒に来ることもあります。谷が一緒に来たときの怖さをこの時肌身に沁みて思い知りました。

この時二つのことを思いました。一つはリスクを少なくするために既存事業は経営の腰を低くする、即ち売上の基準(損益分岐点)を低めに設定して運営することと、もう一つは新しい商品の柱と全く異なる客先の開発、開拓で、需要の底を分散、同時不況の可能性を減らすことでした。

経営再建策として、仕事が少ない中、売上を増やそうとあがくのではなく、売上の基準額を思い切って低く設定、その売上が確保されれば少なくともトントンにはなる、すなわち「損益分岐点」をうんと低く設定することにしました。不思議なものでそれを実行して以来数年間、この売上を下回ることは一度もなく、その分比較的安定した収益を確保できました。

さすがに不況期に設定した当時の基準額は、現在の実態に合いません。現在の需要動向から低めに損益分岐点を算定、これに一定の収益を加えた「基準売上高」を設定します。景気などの変動が有ってもこの基準売上高は確保することで、リスク軽減をはかりたいと思います。


新事業3つの柱

一方同時不況を極力避けるため、商品や新規顧客を増やすことについては時が到り、3つの新しい需要の柱を確立できる見通しになりました。

①ツーバイフォー工法向けスタッド材

これが最も早く新しい売上の見通しが立っています。先日お盆前の8月12日、当社の製品供給先である「(株)さつまファインウッド」様の新工場の地鎮祭が行われました。製材工場ではお盆明けより増産体制に入り、秋からと思われる供給開始に備えつつあります。

②CLT

CLTは今や国策であり、国の成長戦略の一項目にまでなっています(文末「※参考」参照)。「超高層ビルに木材を使用する研究会」のコンセプトに対し、国の研究委託事業公募の指定(25年度補正公募,26年度公募)を受けることが出来たのも有り難いでした。木造建築はもちろん、非木造の中高層ビルにも使用する可能性があると思います。

林野庁委託事業によるCLT施工性確認実験見学会の様子
林野庁委託事業によるCLT施工性確認実験見学会の様子

③SAMURAI集成材

開発者である塩屋教授や研究室の皆さんの永年の研究の結果、完成度の高いシステムになっています。27年度からの商品化を目指します。

SAMURAI試作棟建設現場見学会の様子
SAMURAI試作棟建設現場見学会の様子

(代表取締役 佐々木 幸久)


※参考:

首相官邸ホームページ

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf

平成26年6月24日閣議決定

「日本再興戦略」改訂2014 -未来への挑戦-  より抜粋

 

第二 3つのアクションプラン

二.戦略市場創造プラン・

テーマ4:世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現

(3)新たに講ずべき具体的施策 

i)生産現場の強化 

ii)国内バリューチェーンの連結 

iii)輸出の促進等 

iv)林業・水産業の成長産業化等 

① 林業の成長産業化                      P.120/P130中

豊富な森林資源を循環利用し、森林の持つ多面的機能の維持・向上を図りつつ、林業の成長産業化を進める。 

・新たな木材需要を生み出すため、国産材CLT(直交集成板)普及のスピードアップ等を図る。実証を踏まえ、2016年度早期を目途にCLTを用いた建築物の一般的な設計法を確立するとともに、国産材CLTの生産体制構築の取組を総合的に推進する。 

・木質バイオマスについて、地域密着型の小規模発電や熱利用との組み合わせ等によるエネルギー利用促進を図るとともに、セルロースナノファイバー(超微細植物結晶繊維)の研究開発等によるマテリアル利用の促進に向けた取組を推進する。 

・施業集約化を進めること等により、国産材の安定的・効率的な供給体制を構築する。 

②水産業の成長産業化    以下略