メールマガジン第106号>稲田顧問

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★【稲田顧問】タツオが行く!(第62話)

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「これまでのタツオが行く!」(リンク

62.プログラミングと構造設計

 

 今年は、山佐木材が幹事会社となって、「鋼木混合構造向けの木質パネル制震壁」に関する助成事業を、木構造振興から受託することができた。助成事業の実施項目に構造設計支援ツールの整備が含まれている。そんなこともあって、現在木質パネル制震壁を設置した鋼構造フレームの各種解析ツールのプログラミングに取り組んでいる。

 

 今から40~50年前、構造設計ツール(構造一貫計算システム)のプログラミングにかなり本格的に取り組んだことがあった。その頃多分トータルで20万ステップを超えるFORTRANのプログラミングを行った。そんなこともあって、今でもプログラミングは好きな仕事の一つである。

 また今から10年ほど前の大学教員時代、学生が設計演習で使う構造設計用プログラムを作ったことがある。まず最初に作ったのは応力解析のプログラムである。

 昔作ったソースプログラムは全て無くなっていたので、一から作り直す必要があったが、計算式など必要な仕様書はかろうじて残っていた。それを頼りに作り始めたのであるが、昔取った杵柄とでもいうのか、ほぼ一日で作り上げることができた。それに気を良くして増分法のプログラム、振動解析プログラムなどを作ってみたのであるが、それらのプログラミングもほぼ一日で終えることができた。

 山佐木材に転職してからは、大学の教員時代に作ったプログラムを、山佐木材が開発した木質パネル制震壁の設計ツールに改修する作業に取り組んでいる。ある程度ツールの整備も進んだので、昨年は2階建てのCLTパネル工法の建物(CLTボックスハウス)の設計に適用した。

 

 プログラムの性能・機能の向上等、改修テーマはいくらでもある。プログラミングに、これで完了ということは無い。今年は助成事業のこともあるので、マニュアルの整備等も含め、大型建物でも実用可能なレベルのプログラムにまとめ上げるつもりである。

 今作っているプログラムが、これでしかできないというような独自性があるものかというと、実はそんなことは無い。よくは知らないが、市販のプログラムでも同じことができるらしい。

 「既にあるものを、効率よく使うのが合理的であり、プログラムを自作するのは無駄」という考えは昔からあるのは知っているが、しかし、私は人の作ったプログラムをマニュアルを読みながら使うというのがどうもあまり得意ではない。そのやり方では設計対象建物の構造の特徴が、なかなか頭に入って来ないのである。むしろ建物の設計と並行して、その建物専用のプログラムを組むと、建物の構造の特徴がよく分かってくるような気がする。

 いずれにせよ、このやり方で50年近くやってきたのであるから、いまさら変えることはできそうにない。私のやり方を他人に押し付けるつもりもさらさらないが、私のやり方を否定するのも勘弁して欲しいと思う。

 

 構造設計、あるいはプログラミングというのは、なかなか崇高な知的作業ではないかと思っている。むしろここまで来たら、構造設計のプログラミングをライフワークと考えて、将来リタイアした後も、人生の楽しみの一つとして続けることができたら幸せなのではないかと最近思い始めている。

(稲田 達夫)