M田のぶらり旅・「真夏の果実と本土最南端 佐多岬」

第19回 南大隅町 「真夏の果実と本土最南端 佐多岬」

 2024年7月17日、南九州の梅雨明けが発表された。

 濃い青の空に薄く絹雲が懸かり、山上にはぽこぽこと白い積乱雲が湧く。戸外は焼け付くような陽射しが照りつけている。この日、鹿児島に慌ただしく真夏がやってきた。

 海水浴場の砂浜に、ソルティドッグの用意をして、皆でくり出してみるのも面白いかもしれない。が、今回は大隅半島南端にドライブすることにした。錦江湾沿いの佐多街道(国道269号)を南下する片道65kmのコースだ。

  

 

 鹿屋市浜田交差点を左折し、国道269号を南へ向かう。錦江湾は、北に桜島、南に開聞岳を蒼くたたずませて穏やかに広がっている。南大隅町役場を過ぎると、左手には阿多カルデラの外縁を彷彿とさせるような鋭い岩山が直立している。むこう岸の指宿、山川の断崖、奇岩と対をなしているようにも感じられる。

 2,151mの伊座敷トンネルを抜けると、旧佐多町の中心市街地に入る。港町伊座敷には、おいしいと評判の食堂がいくつかある。ここで、腹を満たしておこう。個人的には海鮮丼なら食事処「時海」(ときみ)、ラーメン、チャンポンといえば「ときわラーメン」がお勧めだ。どちらも県外からのお客も多いので早めに並んだほうがいいかもしれない。

 

 旧役場前の坂を登り切ったところに、国指定史跡「佐多旧薬園」がある。ここは薩摩藩が設置した薬園で、南国由来の寒さに弱い薬草などの植物を育てていた。1687年に家臣の新納氏が藩主に献上した龍眼樹を植えたのが起こりと言われ、かつては龍眼山と称された。

 現在でもこの園内では、龍眼(リュウガン)や茘枝(レイシ)など中国南部や東南アジア原産の果樹70本近くが、勢いよく育っている。そのなかで、濃い緑の葉先にたわわに熟した茘枝(レイシ)がひときわ目を引く。真っ赤に色付いた果実は、楊貴妃が華南から都長安まで運ばせたほどの美味しさだというが、園内採取禁止である。ここは目の保養。

  

 

 レイシ(ライチ)は南大隅町観光交流物産館「なんたん市場」で特産品として陳列されているから、これを年に一度くらいふんぱつしてその味を楽しむのがよいだろう。ぷるぷるとした半透明な果肉は香りよく絶妙の甘さで、飽きることなくいただけるはずである。

 

 旧薬園から南に11km走ると大泊集落だ。太平洋に面した小さな湾奧の港である。海浜公園として、キャンプ場も整備されている。ここに2021年3月に完成した多目的交流施設「みさきドーム」が建っている。

弊社メールマガジン第93号 大泊海浜公園多目的交流施設「みさきドーム」

 ちょっと立ち寄って中をのぞいてみた。

 

 

 広々とした木造大空間を、天窓からの陽射しが明るく照らしている。中は海風もとおって涼しげだった。夏休みには、いろいろな交流事業が計画されていることだろう。

 

 ここから佐多岬公園線という立派な町道を南に進むと、道ばたにはガジュマルや蘇鉄が自生していて、さながら亜熱帯の風景が続いている。5kmほどで観光案内所前の駐車場に到着。駐車している車は、苫小牧、大阪、長崎など県外ナンバーが多い。

 熱中症対策をしっかりとして、佐多岬展望所まで片道約600mの遊歩道を歩くのだが、今は先の大雨被害で一部が通行できず、仮階段の迂回路が設置されており、登り下りの少しきついルートになっている。

 汗だくになって、白亜の環境省展望所にたどり着くと、絶景が広がっていた。西の錦江湾から東の太平洋に潮が勢いよく流れているそのさきに、硫黄島、竹島、屋久島、種子島などの薩南諸島が見えている。硫黄島は高く噴煙をあげているようだ。

 

 

 ここからさらに南に奄美群島が、その先には沖縄、華南、東南アジアが続いている。薬園の植物をはじめとした南方の珍品や富がこの岬をとおって、薩摩に運ばれてきたことに思いを馳せながら、夕暮れ近い遊歩道を引き返し、帰路に着いた。

*******************************

佐多旧薬園:年中無休 24時間開園 駐車場あり

佐多岬観光案内所:年中無休 9時から17時まで

佐多岬公園展望所:年中無休 8時から17時まで 展望台には時間外でもいける。

南大隅町観光交流物産館「なんたん市場」:年中無休 8時から18時まで

参考:佐多旧薬園説明板など

 

(M田)

コメントをお書きください

コメント: 3
  • #1

    しょう (火曜日, 06 8月 2024 15:09)

    紹介されているこの道は数十年前に一度だけ行ったことがあります。でももう記憶の遥か彼方で、当時のことはよく覚えていないのですが、これを読んでもう一度訪れてみたいと思いました。

  • #2

    志鎌由紀子 (火曜日, 06 8月 2024 15:34)

    お〜っ、まさに南国の南の南なんですねえ!海鮮丼に、トロピカルフルーツに、青い海広い空!そのコース、いつかたどってみたい。途中にいい温泉があれば言うことなし!

  • #3

    賢三 (火曜日, 06 8月 2024 15:53)

    県内の事、まだまだ知らない事が多くとても興味深く毎回楽しみにしております。