メールマガジン第21号>バイオマスシリーズ

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★【シリーズ】バイオマスについて(20) 代表取締役 佐々木幸久

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昔の村での暮らしは、生活に必要なものの多くを自分たちの周囲で出来るものでまかなっていました。

米や野菜はもちろんですが、私の自宅から小学校までの通学路には精米所、八百屋、お菓子屋、パン屋がありました。今の若い人には信じられないと思いますが、産婆さん、洋服仕立ての店、呉服屋、靴や鞄を店主が作っている小さな店、油や(煎った菜種の素晴らしい香りが漂っている)、丹工屋(たんこや=桶屋)、葬儀屋(棺桶作りを兼ねている)、大衆演劇の小屋(公会堂と呼んでいた)までありました。通学路ではありませんが、自家の近くによく切れると評判の、「勝秀」さんの鍛冶屋もありました。


これらの通りに今は全くその面影もありません。振り返って思えば実に贅沢な生活環境であり、生活スタイルでした。惜しみても余りある感慨がおきますが、時代の波だったのでしょう、かつての村での同級生たちは中学を卒業し、あるいは高校を出ると、多くは高度成長に沸き立つ都市部へ流れていきました。彼らは商工業や農林業を営む親にとっては後継者候補でもあり、また商店街から見れば顧客候補でもあったのです。彼らが次々にいなくなると、村の通りは衰弱するしかありませんでした。村のなりわいが全国的な高度成長経済に敗退したのです。


今の時代、一人で暮らせばあらゆる、ものやサービスをお金で買う生活をすることになります。それらのものやサービスは今や殆どが都市部や、ひょっとして海外で作られ用意されたものです。使ったお金が村の経済に回る比率は、かつてと比較すると極めて少なくなったと言えるでしょう。


一人で暮らすのでなく、緩やかな共同生活を送る場を、昔の「村」と見立ててみましょう。

数十人から百人位が1ヶ所で暮らす「村」で、村民それぞれが技量や努力性向により、食べものや道具と、暮らしに必要なサービスを提供します。「村民」は等しく生産者であり、消費者でもあります。お金を最大限「村」外に流さず、「村」内で循環させます。こうしてそれぞれの作業は、「仕事」すなわち所得に変わります。生産のための体制を整え、生産が軌道に乗るまでの最初の半年ほどは、恐らく全員が取り組む必要があるかもしれません。仕事は多岐に亘り、需要は多いのです。


最初からこれらの仕事に「村民」のすべてが慣れているとは限らないし、最初の「村」の収穫までには、一定の時間がかかりますから、地域の方々に技術指導など様々な支援をお願いする必要があります。職業訓練の仕組みと予算があるのでこれらの一部で、地域の人たちに担って戴けば良いでしょう。

「村民」の仕事も最初の内は労働力提供として、日当を貰う立場でしょうが、畑仕事、山仕事など次第に専門化、専業化していくのが良いでしょう。「村」外の仕事をするときも専門技術がある方が有利です。

また農地などの貸し付けにより、収穫物を販売する形になって、働きや工夫次第で収入が増加する仕組みも必要でしょう。


遊休インフラをこのようなセーフティネットの生活の場として改築していくためには、当然費用がかかります。これらを一定の基準に基づき、予算化して戴く必要が有りますが、「村民」が入「村」するまでにすべて整えて、お金も使い切ってしまうのではなく、出来れば節約して少しでも残して、手許金として「村」の金庫に残しておく。「村民」入居後に要望に基づき、「村民」の手で、逐次整えていけば、仕事の確保と共に、より満足度の高い生活環境が整えられると考えます。


なおこの際のものやサービスの対価としてやりとりするお金は、通常の貨幣ではなく、この「村」の中でのみ通用する「地域通貨」の方が良いと思います。「村」内で作られる様々なものやサービスは、全国的な経済活動から供給されるそれに比べて、当面品質において劣ると考えられます。そのようなことから、「村内」で生まれる需給は、当面「村」内で囲い込んだ方が、「村民」にとって全体的な利益になるはずだからです。

「村」では手許金を元に「地域通貨」を発行します。ほかにも「村」の運営には様々な事務や手続きが必要になりますが、なるべく人の心になじむ様な緩やかな規則にして、ただし内容公開という透明性と、自主的・民主的な手続きで、「村民」の手で執行していくことを基本にするべきでしょう。

様々なご支援を得られる地域の人たちとのご縁は、暫くして「村内」の需給が十分円滑に均衡するようになった時には、「村民」に働く場を提供して戴く良いご縁になると思います。「田舎は仕事がない」と巷間良く言われていますが、実はかなりの人手不足なのです。

もちろんこの時は普通の通貨で受け取ることになるでしょう。一定の蓄えが出来て、仕事の見通しも立った暁には、この「村」を立派に卒業して、あとあと外部からの支援者として「村」の運営に協力、支援していく途は誠に麗しいと思うことです。


「村」の生活は余り締め付けをしない「緩やかな運営」を主眼とするにしても、大きな面倒事を引き起こさない程度の、ある一定の入居条件は設定するべきでしょう。

このような条件整備を行った上で、「現金給付によるセーフティーネット」は段階的に縮小し、最終的には廃止されることを心から願っています。

(代表取締役 佐々木幸久)

※参考

食料

米麦豆野菜など、鶏山羊豚などの飼育。豊かな食生活を自給でまかなう。麦や大豆で味噌作り。

 

エネルギー

電気

太陽光発電と蓄電池とでまかなう。居住区間の改築の時に省エネにして冷房は最小限に。

勤労を重んじ、昼間は冷房は切ります。

 

暖房や給湯は、太陽熱集熱板と、薪ボイラーによる。

お風呂は共用ながら毎日使えるよう、きちんとしたい。

薪は夏から秋にかけての間に準備して、十分乾燥する必要がある。

出来れば調理も、かまどなどにより薪を使えばエネルギー自立が完全になる。