メールマガジン第94号>会長連載

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★【会長連載】 Woodistのつぶやき(51)

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敷地造成時に伐採した薪
敷地造成時に伐採した薪

 この項を書いているのは1月15日、久しぶりに山荘で過ごしている。無尽蔵に近い燃料は寒い冬に特に山の恵みと感じるものの一つだ。暖房のストーブ、お湯を沸かす薪焚き温水器、煮たり焼いたりの調理に使う七輪の燃料は、周囲の山からいくらでも採取できる。 

 

 チェーンソーも持っているのだが、実はわざわざ伐らなくても、山をさっと回れば、一日分くらいの薪は容易に採取できる。自然にあるいは風によって枝が大量に落ちているのだ。昔の童話で「お爺さんは山に柴刈りに」とあるが、まさに今の私はその「柴刈りの爺さん」で、天気の良い日は山に入って1日分の薪を抱えて帰ってくる。 

枯れ枝が林内あちこち転がっている
枯れ枝が林内あちこち転がっている
作業道に倒木が。前回は無かったもの。次回来訪時に伐採しようと考えている
作業道に倒木が。前回は無かったもの。次回来訪時に伐採しようと考えている

 昨年夏に台風の後山荘に入ったときは、敷地一面の落ち葉や枝に唖然とした。その量は多分みかん箱30箱以上も有ったのではないか。この落ち葉を乾いた部分から掃除して、後で述べる薪焚き温水器に投入する。お湯が沸き上がる頃にその日の掃除作業は終了、結局3日間この落ち葉と枝のみでお湯を沸かして掃除が完了した。

 

薪ストーブ

 一昨年の冬は暖房器具無しで随分寒い思いをしたものだ。そこで会社で現在使っていないという薪ストーブを譲ってもらい、年末にこれをを据え付けて貰った。このストーブは20年以上冬場には事務所で毎日加工廃材などがんがんに燃やして事務所を暖めていた物だ。厚手の頑丈な鋳物製で永年使っているにも関わらず新品同様、シンプルながらなかなかの逸品だ。作ったのは製材機メーカーの大井製作所である。なお同じ製材機メーカーの石田機械と合併して、現在はオーアイイノベーションと社名も中身もおしゃれな会社になっている。今は本業が大繁盛で作っていないというが、そのうちもっとおしゃれで高機能な物を再登場させるかもしれない。

 

 薪ストーブの性能をきちんと発揮させるためには、良い薪と合わせて煙突が非常に重要である。薪がよく燃えるためには燃焼炉に空気がスムーズに入ってこなければならない。そしてそのためにはスムーズな排気が不可欠なのだ。

 自宅で使っている暖炉は北欧製だが、平成元年に据え付けて以来三十余年、煙突掃除をした事が無かった。暖炉の燃焼機構も優れていると思うが、十分な断熱を施した煙突も大事な役割をしている。ストーブを出た熱い燃焼ガスが、熱いままで外へ出ることが肝腎なのだ。それが断熱機能のないシングル管の煙突だと、急冷でガスの体積が急激に減り、排気がスムーズに行かない。その結果給気も円滑に行かず薪がよく燃えないのだ。また排気に含まれるタールなどが急冷の結果煙突内に付着して、煙道を閉塞する。タールは固着していて取り除くのは容易でない。

 工場の電気、機械、制御関係の新設を含む改良、保全を一手に引き受けてくれている平野芳治君にストーブ設置をお願いした。

 

150mm厚さのCLT壁を切り抜く
150mm厚さのCLT壁を切り抜く
切り抜いた壁
切り抜いた壁
煙突
煙突

 

 この煙突のメカニズムを説明して適切な材料をいろいろ探して貰った。断熱材の入った二重管の煙突は国内では非常に高いことがわかった。そこで煙が直接通る内管と、それより50mmくらい大きい外管を準備してもらった。

 内管にロックウールの25mmシートを二重に巻き付けて、これに外管を取り付ける。これは非常に有効で、燃焼中の煙突の外を触っても熱くない。おかげで一度焚き付けると、煙突から勢いよく煙がでて薪が実によく燃える。夜は大きな薪を入れて吸気口を少し絞っておくと、朝まで火が持っている。部屋はCLTで四方を囲われているので暖房効果が高く熱いくらいで、ストーブがなかった昨年に比べると2枚は薄着になっている。

据え付けたストーブ
据え付けたストーブ
燃える様
燃える様
煙突
煙突

 

薪焚き温水器(温水ボイラー)

 メーカー(※注)はボイラーと名付けているが、缶内の圧力は常圧であり、温度も100℃を超えない。蒸気目的の高圧の圧力容器ではないので、取り扱いは容易である。ボイラー缶内に入っている液体(水に不凍液、防錆剤などを混ぜたもの)を温め、その中に熱交換器の螺旋状のパイプが入っている。このパイプにつなぎ込んである水道の水が温められてお湯が得られる。風呂のお湯や台所の洗い物などにもふんだんに使える。

 

※注 メーカー エーテーオー株式会社

  一般家庭・小規模事業所用の給湯・床暖房兼用ボイラー ウッドボイラー S-220NSB

 

ボイラー   外観
ボイラー 外観

 火を焚き付けるには、まず炉内に落ち葉と紙くずを入れる。その上に枯れ枝を適宜折るか、太さによっては手鋸で切って乗せる。これに点火するのだが非常に良く燃える。炉内の温度が上がってきたら、だんだん大きな薪を放り込んでいく。必要な量のお湯が得られる90℃前後になるまで、冬場は気温も水温も低くなっているので、燃料の種類にもよるが、2時間くらい掛かるだろうか。夏場は前夜の余熱も多少は残っていてその半分くらいの時間で済む。 

ボイラー   燃焼中
ボイラー 燃焼中
ボイラーの焚き付けに使う枝の例
ボイラーの焚き付けに使う枝の例

 

 参考までにメーカーエーティオー社「ウッドボイラー」の説明書を引用する。

(引用)

 「ウッドボイラー」は木質系燃料専用の無圧開放式ボイラーです。ウッドボイラーは他社製の薪焚きボイラーと違い、本体の貯湯槽の湯を直接使用せず貯湯槽に熱交換器を入れ間接的に熱交換器を暖め、使う分だけ熱交換されるので無駄がなく衛生面でも安心してお使い頂けます。また、水道直圧で給湯しますから減圧される事がなく温水を供給できます。熱交換器ですから深夜電気温水器などのように定量制ではないため連続出湯中の温水切れの心配がありません。

 薪ボイラーで給湯する場合、ミキシングバルブの併用で貯湯漕が高温の時でも供給する温水温度が一定に保たれる為、安定した温水を供給できます。

 用途も給湯、床暖房以外にも床下放熱器、パネルヒーター、源泉加温(保温)、融雪(路面、屋根)の凍結積雪防止、養鯉場の加温、木材乾燥、施設園芸、温水洗浄と多種多様な使い方があります。(引用終り)

 

浴槽は手作りヒノキ風呂

 浴槽は会社の木工職人本村君に作って貰ったヒノキ風呂である。本村君には山荘のベッド、テーブル、食器棚なども作って貰った。彼は職人歴50年以上の家具木工塗装その他木材加工の万能選手である。

ヒノキ風呂の浴槽
ヒノキ風呂の浴槽
風呂から外を見る
風呂から外を見る

 

七輪で調理

 七輪で使う木炭は薪ボイラーの燃焼室で必要な分は容易に採取できる。ボイラーが沸き上がった頃を見計らって炉のふたを開けると、薪は殆ど熾き火になっている。この熾き火を「火消し壷」に入れる。熱いので外に一夜放置して翌朝見ると炭になっている。いわゆる消し炭で、木炭に比べると軽くていささか頼りないが火付きは良い。煮たり焼いたりには何の問題もない。火消し壷は2つあるので、せっせと作っては箱にため込んでいる。

七輪で煮物
七輪で煮物
ストーブから種火
ストーブから種火

炭
火消し壺
火消し壺

(佐々木 幸久)