メールマガジン第64号>社長連載

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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(31)

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 去る12月25日、上野物産(株)の新社屋建設起工式神事が行われ、お招きを受けたので営業の吉松次長と参加した。設計は鹿屋市原園一級建築士事務所、施工は入札の結果鹿屋市の国基建設(株)が落札決定。当社は国基建設さんの元で木造躯体のCLT工事担当である。

 

 上野物産(株)は素材生産事業と土木コンサル会社を経営している。常務を務めている奥様の治美さんは明るくエネルギッシュな方で会社を盛り上げている。 


 

 森林率の高い当地では林地に発電施設(風力、太陽光など)などを作るケースが多い。そして上野さんの所のように林業、土木コンサルを併営しているコンサル会社は少ない。林地に関する様々な手続きや立木処理の手法に堪能であり、繁盛している。そのような事からの事務所増設である。

 

 上野物産(株)は現社長上野豊さんの父君 哲夫さんが高山町(現肝付町)に、当時盛んであった国有林伐採事業等を視野に創業された。早くから肝属木材事業協同組合の理事を務められた。同協同組合は現在私が理事長を務めており、上野豊社長には永年理事を務めて戴いている。協同組合ではこれまで様々な事業をしてきた。共同購入、共同販売、金融事業などであるが、多くはその役割を終えて、現在では研修旅行や、毎月の勉強会、情報交換会をしている。

 

 随分以前に月例の勉強会の中で、上野さんから国有林の素材事業について、「伐採業者が植栽まで一緒に引き受ける事が出来れば、植栽の時余計な手間が掛からないように考えて伐採するんだけどな」という発言があった。聞くと植栽の時に「地拵え費」という費用項目があって、少なからぬ費用が積算されるとのこと。そして実際の作業でもかなりの手間を要し、積算額で足りないことも多々ある由。もしそれが半分以下にでもなるなら、林業健全化のために大きな貢献ではないか。これは是非林野庁にもご提言しておかねばなるまい。

 当時林野庁にYさんが大分県庁への出向から帰っておられた。何かの用事で林野庁を訪れた際に、Yさんに現場でこのような意見があることを申し上げた。「それなら国有林部のSさんに言ったら良い」とのアドバイスで、初対面のSさんに縷々説明した。

 ことはこちらの考えているほど単純な話ではなかった。Sさんの説明によると、伐採事業は国としては「収入行為」であり、造林事業(地拵え費も含む)は「支出行為」となる。国の会計上の基準としてはこれらは明確に区分されるべきもので、伐採事業と造林事業を同一業者に同時に契約することは出来ないとのことであつた。頭脳明晰なSさんから論破されてあえなく敗退、帰ってから上野さんに不首尾を報告したことであった。

 なお今では国有林の入札において時としてこのような上野さんが望んでいたような伐採と植林の合併契約が行われているとのことである。どのような経緯があったものか知らないが、時間はかかっても良い方向に進んでいくのは大変結構なことだ。 

 (代表取締役 佐々木 幸久)