メールマガジン第60号>研究室だより

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★【大学研究室だより】 南京林業大学(その6)・小松幸平先生より

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 ご無沙汰いたしております。今回は2018(平成30)年の6月一杯と9月の初旬に見聞きした諸々の出来事の中から幾つかをお伝えします。

 

 6月は修士の学生さん達の卒業論文発表会の時期です。今年も優秀な3名の修士課程院生が巣立ちました。【写真1】は修士論文の口頭試問の風景です。本番の発表は勿論中国語で行われましたが、事前に研究室ゼミで英語による発表もしてくれたので、研究内容は十分理解できました。

 

【写真1】  修士論文の口頭試問の風景

 右端が発表中の修士3回生

【写真2】口頭試問終了後の記念写真

 後ろの3人が終了生、前列8人が試問委員



 

 学院の施設も年々良くなっています。【写真3、4】は最近完成した南京林業大学の新しい総合図書館です。私が最初に南京に来た頃からずっと工事が継続されていた建物で、この度ようやく完成しました。外観も内部もとてもスマートで、南京林業大学が自慢する施設の一つです。紙の蔵書についてはよく分かりませんが、図書館が一括して管理している電子書籍の豊富さについて言えば、京都大学のそれより多いように感じます。入手したい海外の有名な学術雑誌は殆ど全てインターネットで入手可能です。

 

【写真3】南京林業大学の新しい総合図書館(外観)

 

【写真4】南京林業大学の新しい総合図書館

(一階の3層吹き抜け大空間)



 

 南京で最近盛んな公共事業の一つが、古い5,6階建て以上のアパートに外付けのエレベータを付ける事業です。中国でも人口の高齢化が進み、これまでは階段を自分の足で登り下りしていた人達も、段々エレベータが必要となってきたようです。【写真6,7,8】は大学の構内あるいは外部で見かけた外付けエレベータが施工された古い中層アパートの例を示します。【写真6】は私の宿舎のすぐ近くにある5階建てアパートの例ですが、強化ガラス製のスマートなエレベータが付いた御陰で、建物自体も少し垢抜けしたように見えます。やはり、外付けエレベータは格好良いデザインのものがいいですね。

 この外付けエレベータの仕事は、中小の建設業にとって、当面かなりの需要が見込める魅力的な事業になるのではないかなと思っています。集成材+CLT床+総ガラス張りも綺麗でしょうね。

 

【写真6】私の宿舎のすぐ近くの総ガラス張りの外付けエレベータ

 

【写真7】無機系外壁材で覆われた外付けエレベータ(学外)

 

【写真8】総ガラス張りの外付けエレベータ(学外)



 

 さて、前回も紹介しましたが、私が最も注目している南京林業大学・土木工学院・構造実験センターについてもう少し詳しく紹介したいと思います。この土木工学院構造実験センターに行くには、我々の材料科学・工学院のキャンパスから地下鉄に乗って40分ぐらいかかりますが、建物は最寄りの駅から更に1km以上離れていますので、駅からは中国で人気のシェア自転車【写真9】に乗って行くのが便利です。日本ではシェア自転車制度のマイナス面(管理の問題、不法投棄等)ばかりが伝えられていますが、競争・淘汰の結果がハッキリしてきたように感じます。

 

【写真9】中国で人気のシェア自転車。スマートフォンのアプリ必携で、学生さん頼みです。

 

【写真10】南京林業大学・土木工学院・構造実験センターの外観(手前の白い建物)


 

 前回は雨天時の写真でしたが、今回は快晴の日に撮影した外観を【写真10】に示します。内部は、本格的な各種土木工学実験を実行可能な素晴らしい反力床、反力壁、加力装置そして大形のクレーンを備えた実験施設【写真11】です。ただし、学院間の壁があって、今のところ、我々はこの素晴らしい実験装置や反力壁などを使わせて貰うことはできません。我々が使える唯一の試験装置は【写真12、14】に示す鉄骨製の反力フレームだけです。

 

【写真11】構造実験センター付属の素晴らしい反力床、反力壁、加力装置 

【写真12】我々が唯一使える鉄骨フレーム製の実大木質構造要素実験装置



 

 さて、この土木工学院の構造実験センターで行われている研究は、一般的なコンクリートの構造実験に加えて、中国が世界トップレベルの技術開発力と成果を誇る「竹積層材:英語でGlubam(Glued bambooのこと)」の構造物への適用可能性を明らかにすることにあります。ちなみに、木材を使った集成材はGlulam(=Glued laminated timber)と呼びます。【写真13】は、次に実験が予定されているGlubamの断面を示したもので、実にきめ細かに竹のラミナを幅矧ぎ接着し、さらにそれらを積層接着して、重厚で美しい構造部材を完成させています。とても強そうですね。

 【写真14】は我々の研究室の修士課程院生が継続している屋根トラスの載荷実験です。プーリーとワイヤーによる載荷方式で、トラスの強度性能を調べています。実験はまだまだ続きそうです。

 

【写真13】土木工学院の研究者が開発に成功した竹積層材:グルーバム (Glubam)

【写真14】材料科学・工学院の修士課程院生が継続している屋根トラスの載荷実験


(次回はあるのか?)

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