メールマガジン第57号>社長連載

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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(24)

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 5月前後は様々な団体の総会が真っ盛りである。林業・木材関係でも早いところでは4月から始まり、6月にはほぼ終了する。

 

私の出席したものだけでも以下の通り。

4月24日(火) 東京  国産材製材協会   東海大学校友会館

5月18日(金) 東京  日本集成材工業協同組合 KKRホテル

5月22日(火) 東京  日本木材保存協会  メルパルク

5月23日(水) 鹿児島 鹿児島県木材協同組合連合会 県木連会館

5月28日(月)    鹿屋     肝属地区林材協会 さつき苑

    同                同         肝属木材事業協同組合

       同             同         (協)きもつき木材高次加工センター

6月 6日(水) 東京  日本CLT協会 都市センターホテル

 

 当社が事業内容として製材、集成材、CLTと多岐にわたっているので、会社の事業規模はごく小さいのに、このような仕儀になる。

 

 5月28日は地元鹿屋で三つの林業関係団体の総会が行われている。かつてはそれぞれで行っていたのだが、重なって所属している人も多く同一日に出来ないか相談したところ、数年前からこれが実現、今ではすっかり定着した。午後から逐次三つの総会が行われ、終了後は合同の意見交換会を行う。年々盛んになって今年は参加者数六十数名、焼酎を酌み交わしながらの賑やかな林業談義交歓会となった。

 

大隅地区の林業・木材関係者が集まる「三団体合同意見交換会」
大隅地区の林業・木材関係者が集まる「三団体合同意見交換会」

 

意見交換のきっかけになればと、開会前に私から10分ほど資料を基に話題提供を行った。

その時の資料が次のものである。


平成30年5月28日(月)

大隅地区林材業の持続的な発展を願う

1.活況を呈する林業

 冷え込んでいた林業関連が近年空前の活況を呈しています。大型製材進出等による木材需要、集成材・CLT向けB材需要、発電向けC材需要、輸出向け需要共にいずれも大幅に伸びており、今後も更に伸びていくと見られています。

 

2.大隅地域林業の大きな問題点   放置林と再造林の不徹底

 一方で戦中戦後生まれのこれまでしっかり山を管理していた世代の高齢化が進んでいます。これまでしっかり管理されてきた、手入れの行き届いた山から真っ先に伐られていく可能性があります。 

 青年達は早くから都市部へ流れ、跡継ぎのいない膨大な山が、このままでは境界も分からぬ管理不在、幽霊山林になってしまう恐れがあります。

 ごく近い将来、遠くから見てまだまだ緑が残っているじゃないかと思って、いざ山に入っていけば、そこは持ち主不明、売りも買いも、伐りも手入れも出来ない山だけだったという可能性があります。

 

 枯渇に貧している大隅流域の優良森林

1.「森林組合が事業の対象に出来る民有林は30%」大隅森林組合岡冨参事

   この30 %の森林を、仮に有効林と呼ぶ。    有効林率30 %

2.鹿児島県の再造林率は40%という。

   持続可能な森林率は、有効林率(30 %)× 再造林率(40%)=12%

3.大隅流域民有林面積は10万ha弱

   人工林率が60 %なら6万ha 弱が民有林人工林面積

4.持続可能な人工林面積は民有林人工林6万ha の12%=7200 ha

5.流域の年間丸太需要25万m3 と仮定する。

  蓄積400m3/haと仮定して

  資源持続可能想定年数 400m3 ×7200 ha÷250,000 m3  =11.5年

    11 年半で大隅半島の「持続可能森林」は枯渇する。 

 幸い法改正により、放置林についてある程度の公的な森林整備ができるようになりました。是非市町村には取り組んで欲しいものです。

 

 3.積極的活用策として放置林を積極的に買い取りましょう。

 一方民間資金を活用する、より積極的な対策が考えられます。

 超大手ゼネコンである竹中工務店が、「森林グランドサイクル」という概念を提唱しています。地域の森林・林業と、木材加工で地域の林業サイクルを作る。そしてそれに竹中工務店もグランドサイクルとして加わって都市部のビルなどにその木材を利用する、と言う考え方です。

 

 この考えに基づき、先日東北仙台市に出来る10階建て木造アパートの床と壁に使用する木材(CLT)について当社と契約しました。大隅の木材を主としつつも、一部大分県日田の木材もあえて当社に搬入、併せて加工し、6月には仙台へはるばる運びます。

 

 大隅地域の森林サイクルを更に強化し、都市部との大きなサイクルを作るために、流域の放置林や放置予備軍の山林を集約し活用を図ってはどうかと考えています。集約した山林は公有化するも良し、森林組合が所有するも良し、あるいは民間の林業事業体にも森林の持続性を計るために是非積極的に保有して欲しいと思います。

 

 流域の森林は巨大です。さらに大規模な集約化が進められれば、企業進出という形で大手企業に森林保有をして貰うという考え方が出来ます。現にある大手会社に、「山を 1000ha程度買わないか」と持ちかけたら、「面白い」という反応でした。但し彼らは林業経営は出来ません。山林の適正な買い取り価格を判定することと、集約後の管理をしてくれなければ困るということでした。これらはここにいる林業木材加工に従事する私たちが出来る事柄です。

 

 一市町で出来ることではありません。是非大隅流域の各行政、中でもご臨席の鹿屋市様、肝付町様、南大町様には率先お取り組み下さることを心から願うものです。

 幸い今年は国の森林環境税が創設され、来年度から一部市町村に配分されるようになりました。さまざまな使途があることとは思いますが、土地集約や名義変更には膨大な費用が掛かるものと考えられます。眠れる森を集約することで地域の貴重な資源として、目覚めさせるこの集約事業に、是非貴重な森林環境税をあてて戴きたいと切に願うものです。

 

4.新しい木材使用例

①木造3階建てアパート  鹿児島県姶良市  写真1 

②木造3階建てオフィスビル 高知県高知市 柳町ビル 写真2

③鉄骨ビルにCLT床使用 佐賀県佐賀市 松尾建設本社ビル  写真3

【写真1】
【写真1】
【写真2】
【写真2】
【写真3】
【写真3】

 

④空港施設天井にCLT利用 沖縄県下地島空港ターミナル 完成予想図4(上下)

⑤木造10階建てアパート  宮城県仙台市泉高森  完成予想図5 

【完成予想図4】外観
【完成予想図4】外観
【完成予想図4】内観
【完成予想図4】内観
【完成予想図5】
【完成予想図5】

 

 (代表取締役 佐々木 幸久)