メールマガジン第51号>社長連載

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★【社長連載】 Woodistのつぶやき(18)

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久々の対馬訪問

 去る11月14日、長崎県農林部並びに長崎県林業公社のお招きで、久しぶりに対馬に渡った。2泊3日の用務は島内の森林や木材関連の視察、林業公社経営委員会の出席、関係者への講演とである。今回対馬は初めてという佐々木真理と同行だったので、観光を含めて島内各所を訪れようとさらにもう1泊した。

 

 高台から見る島の景色は、海と岬と湾とがせめぎ合い、すさまじいほどの景観だ。

 

対馬林業のすばらしさ

 県から戴いた資料によると島の面積7.1万haの内、約90%の6.3万haが森林で、木材が針葉樹広葉樹合わせて年間約6万m3生産されている。1ha当たり1m3であり、必ずしも生産量が多いとは言えない。土地は痩せている、と言うがヒノキが良く生長しているし、広葉樹林も豊かである。

 

 最近島内での製材工場やチップ工場が盛んになっていて、何と島内産木材の島内加工が80%近くになっているという。これは前回訪問した十年余前に比べると大きな進歩である。

 製材工場経営の石井さんが「もっと丸太を送って欲しい」と山側へ呼びかけているが、この離島にあってよく頑張っていると言って良い。

 

 キノコ生産が活発で、原木椎茸生産としては全国でも1、2を争う規模と聞いた。それは全く1人の経営者によるもので、今回お会いしていないが、この経営者の意欲と才覚に敬意を表したい。こうして島内産のクヌギなどの原木がよく利用されていることは賢い島内資源利用といえる。

 

 

対馬林業の課題

  今春「有人国境離島地域保全特別法」という法律が出来、対馬のような国境離島に対し島の生活を守るために様々な補助がなされる。島内重要産品を島外に販売するための運賃にも適用される。

 この制度により、内地製材と運賃面での不利が解消される。対等な競争環境になり、対馬ヒノキの優位性が生きる。これが木材の島内加工率が高まりつつある要因だろう。これはとても良いことだと思う。                      

 このように活発な製材の裏で、島内産木材が対馬島内で利用されていない現実がある。今や戸建て住宅の建築は、対馬に限らず全国的にすべてがプレカット加工材で建てられている。そして対馬島内にプレカット工場は無い。

 対馬島民は自分の家を作る場合、基本的に島内産の木材を使えない。一般的には福岡のプレカット工場で加工されたどこかの木材を使って建てられることになる。

 従ってこれだけ豊かな森林があって、製材はかつての活発さを取り返しつつあるものの、昔と違ってその製品は島内では殆ど使われず、福岡他の島外都市部へ移出されているのだ。それは文化的におかしいし決して好ましいことではない。

 

対馬産木材を島内利用する

 行政並びに林業関連業を挙げてプレカット工場を作ることが有益だ。対馬の場合、特に「産官を挙げて」ということが重要だ。たださえ少ない人口が少子化に加え島外流出がある中、一社単独でベンチャー的に創業することはリスクが大きい。 

 島外に売ればという声もある。島外で対馬産材が競争力があるのは、対馬ヒノキが優秀だからである。厳しい競争下勝ち残ってきた本土プレカットには、プレカットでは叶わない。島外販売対策は現在の売り方が成功しているし、それで十分だ。 

 プレカットの目的はあくまで島の風土と父祖が育んでくれた対馬産木材を使う意義と喜びを対馬島民が味わうためだ。従って戸建て住宅だけでなく、島内すべての建築をこのプレカットを通じて島内産木材で建築したい。異常なほどに活発な韓国からの観光客、そしてそれを目当ての韓国資本による様々な観光施設。これらもすべて対馬産材で作りたい。

 

 韓国資本によるホテル建設を見た。これも島外産の木材によるものだろう。折角観光が隆盛にもかかわらず、島内経済への恩恵がごく一部に限定されるとするならば、それは残念なことだ。

  対馬市には市独自の全国に類を見ないしっかりした林業に関する条例があるという。その中で島内で行われるすべての建築に島内産木材を使うことを求めたらよい。

 以上を含めて、「行政、林業界連携して、対馬の実情に適合するプレカット工場を建設する」べき時だと提唱する。

 


1.佐護計理氏の林業

 佐護計理氏にはご自身の山林を自ら案内して下さった。氏は古武士の重厚な雰囲気風貌で、ゆかしい感じを受ける。86歳とのことだが、足腰軽く高低構わず谷にでもずんずん降りていく。

 氏は120年の長伐期林業を目指しておられる。立派な山を見ながら、氏のご意志を実現する後継者のことが気になった。東大法学部に在学中の孫娘さんが山に関心を持ってくれており、期待しておられるようである。私もまた期待を込めて、「いつかお孫さんとお取引したいものです」と申し上げたことである。

 


 

2.対馬木材事業協同組合(チップ工場)

 代表理事さんのご子息が、鹿児島大学工学部幡手泰雄先生(永くお目に掛からないが、実に行動的なお元気な方だった)の部屋の卒業生と聞いてびっくり。 

松元代表理事
松元代表理事

 

3.もりのめぐみ協同組合製材工場

石井代表理事
石井代表理事

 

4.対馬しいたけ協同組合

  株式会社 翔栄


 

 (代表取締役 佐々木 幸久) 


前回のつぶやきについて

 先月のメルマガ50号にてご紹介した「千本松原を歩く」に一部誤りがありましたので、修正いたしました。ご指摘いただき、ありがとうございました。