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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(33)

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CLTの使い方

 昨年施行された各告示によりCLTが建築に利用可能となりましたが、どういう使われ方がされているのでしょう?当然CLTパネル工法の告示による建物が増えるのかな?と思っていたのですが、当社が告示施行後取り組んでいるCLTに関する物件では、CLTパネル工法としては、2件のみが該当します。

 

では・・山佐や国内ではCLTをどんな所に使用する物件を建設しているのか?

まだ詳細には、お話できないものも有りますが

 

1. S造の床(耐火構造)

以前からご紹介していた佐賀の物件の他にも、10階建S造の床への引合他、設計事務所さんからの問合せが

寄せられています。

 

上は施工性の確認試験

 

下は、サステナブル事業で建設予定の5階建ビルのイメージ図

下は鉄骨ビルへの木材利用イメージ

床・耐震壁にCLT

 


 

2. S造・RC造の耐震要素

この使い方も何度かご紹介しましたが、今後も増えていくのではと期待しています。

 

3. 木質軸組工法の耐震要素

CLTだけでは、大空間を構成するには多少の無理があります。

構造用集成材等により必要な空間を確保し、耐震要素や小部屋にCLTを用いて建てる。

この工法では、すでにいくつかの物件が建てられていますし、今後も増えると考えられます。 

 

木造軸組工法にCLTを耐力壁や床に使用

写真は高知県木材組合連合会事務所

写真はふつう合班様が撮影され日本CLT協会PPTに使用されているものを使用

 


 

4. 枠組壁工法の床

平成26年度から既に検討され、また一昨年には、つくばの実験棟(6階建)の床の1階分に使用され施工性が良かったという話も聞いていますし、今年度の実証事業でも1例の検討がなされるとの事。ある程度のスパンに限られると思いますが住宅や小部屋の多い建物には、有効なのではないでしょうか?

 

写真は、つくば建築研究所内に建設されて枠組壁工法の床に使用された例。

 

写真は、(一社)日本ツーバイフォー建築協会様提供 日本CLT協会セミナーPPTより

 


 

5. 在来軸組工法の耐震要素

上記3.の場合には、建築基準法令第46条2項による許容応力度計算以上の構造計算が必要となりますが、1例としてCLTとして壁倍率を取得し、通常の壁量計算で建てられる工法もあります。CLT以前より協同組合レングス様のJパネルも壁と床の倍率をお持ちですが、CLTのJAS認定後に壁と床倍率を取得した「Aパネ工法」という工法もあり 複雑な計算をしなくてもCLTを使う事が可能です。「Aパネ工法」については後で改めてご紹介いたします。

 

6. CLTパネル工法

概要・コメントは省略しますが、ようやく施行された設計法での設計・施工にも大いに期待をしています。

 

 CLT関連告示施工後の九州第1号物件国交告第611号の設計法ルート1による建物が福岡県に建設がなされました。

 第2号は、鹿児島県姶良市に木造三階建共同住宅が間もなく建設予定です。

 


 ちなみに当社が今抱えているCLT物件で最大のものは、屋根に使用する(ウィーンのG3もですね)というものです。来年の今頃、工事が無事終了していることを祈って、今年は全社一丸となって対応したいと思っています。ご紹介は契約完了後に。

 


Aパネ工法とは

 Aパネ工法普及協議会 HP  https://www.apane-clt.com/

  

 わが国における木造建築物の内 最も多いものは、在来軸組工法や枠組壁工法などによる戸建て住宅等であり、在来軸組工法においては、構造計算も4号建物にかぎっては、建築基準法施行令 3章3節 木造 に書かれた基準(仕様)や平12:建告第1352号、第1460号などに準拠し比較的簡易な壁量計算で設計が可能となっています。

 そこで名古屋市に本社を置く阿部建設株式会社様は、CLTの住宅に簡易にできる利用方法として「壁倍率」の取得に向けて研究・試験を重ね「壁倍率」の大臣認定を取得し「Aパネ工法」として普及を図っています。

 

 前述したように CLTを軸組工法に取り入れる場合には、施行令第46条2項による許容応力度計算 又は、令第81条、第82条で定められる各種検証法により計算は可能ですが、その応力に応じた接合も計算と実験を行っているのが現状です。一方、Aパネ工法の場合には、壁倍率・床倍率を取得する際に 接合方法(釘)も含めての認定となっているため、特殊な接合の試験は不要であり、使いやすいシステムとなっています。

 

当工法の普及に向けて協議会では、講習会を各地で開催し当工法の利用を呼び掛けていく予定だそうです。.

近々の説明会と講習会はhttps://www.apane-clt.com/を参照下さい。

 

Aバネ工法による黒川ヒュッテ (写真は普及協議会HPより)

 


図は、Aパネ工法における 壁・床のイメージ上記に筆者の周りに見受けられる

CLTの告示設計法及び 他構造での利用例をご紹介いたしましたが国土交通省においてもより大規模建築物へのCLTの利用を目指し平成29年度~33年度にかけて 混構造としての利用方法について研究がなされる計画で、ますますCLT熱は、日本国内に広まっていくのでしょうか?

 

ダウンロード
国交省混構造_研究課題.pdf
PDFファイル 1.7 MB

常務取締役技術本部長 塩﨑 征男