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★【シリーズ】CLT(Cross Laminated Timber)(20)

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試験(実験)月間に突入しています。

 先々月、先月号でお伝えしていましたCLT関連の各試験がスタートし、慌ただしい生活を送っています。

終了した試験の中からいくつか 速報としてご紹介します。 


1. CLT床2時間耐火性能評価

これこそ、「超高層ビルに木材を使用する研究会」の発足以来、優先して進めていた目標の一つですが、平成27年12月7日・11日の上面加熱試験に続き、平成28年1月25・27日に下面載荷試験を性能評価機関である (一財)建材試験センター西日本試験所にて、実施いたしました。

結果は・・・無事に「合格」の判定をいただきました。

2時間加熱・6時間放置後に脱炉し、被覆材を外した試験体。CLTには焦げも変色もなく、無事に「合格」!
2時間加熱・6時間放置後に脱炉し、被覆材を外した試験体。CLTには焦げも変色もなく、無事に「合格」!

 次は性能評価機関で行われる、部会において承認がいただけると、いよいよ国交省への個別認定の申請となります。この事業の開始時期から、注目されているのか期待されているのか、いくつかの課題や問題点のご指摘をいただいていましたので、その点に対してきちんと説明が出来るように準備をしておかなければなりません。今からが本当の勝負です。

 

  試験当日(27日)は、林野庁委託事業の委員会を開催し、委員の皆様にも結果発表に立ち会っていただきました。その夜は、下関市に場所をうつし 「ふく」でお祝いの席を設け、皆で喜びを分かち合いました。

まだまだ、先には課題など解決しなければならない事はありますが、まずは第1段上がれたかな・・という感じです。本紙を借りて、当事業に関わっていただいた皆様 また助言・支援いただいた皆様にお礼を申し上げます。



2. E-ディフェンス 振動台試験

昨年同様、防災科学技術研究所E-ディフェンスにおいて、1月18・19日と25・26日の2回 CLT建築物の加振実験が行われ、公開されました。

 今回の試験の目的としては、現在検討を進め、まもなく告示化されるであろう「設計法」の内容についての正当性を確認するというものでした。

 設計方針としては、想定している設計法での極稀地震を限界と設定された性能で設計されており、壊れてもおかしくない内容だったと聞いています。

左が小板パネルを接合したE棟、右が大板から開口部をくりぬいたD棟
左が小板パネルを接合したE棟、右が大板から開口部をくりぬいたD棟

結果は、E棟では接合部、D棟ではまぐさパネルの破壊など設計で狙った通りとなりました。

昨年の試験でも思ったのですが、パネルが破壊されても、倒壊はせず、加振後も残留ひずみが残らず、元の形状に戻っていたのは、CLT構造の良い点では・・と思った反面、これだけの地震を受けたら内装にも支障が出ているでしょうが、目視で発見が出来ますが、CLTは目視でパネルの状態が確認できるのかな?という疑問も考えました。CLTの非破壊検査方法なども今後必要になるかもしれませんね。


3. 鉄骨構造CLT床の遮音性能確認 (※かごしま木づかい推進交付金事業を活用し実施)

CLTの遮音性能は各地で測定試験が実施されていますが、素材自体が軽いということで、特に重量床衝撃音においては、良い結果が得られていないようです。耐火性能を確保できたとしても、生活における音など環境面における性能も満たされなければならないと思い、今回、2時間耐火性能試験と同仕様の被覆材を配したCLTでの床衝撃音等を測定し、設計に反映できるようにと日本建築総合試験所様に依頼し遮音試験を実施しました。

先に、求められる遮音性能というものを下表にて示します。

試験方法としてはCLTを鉄骨で組んだ枠に取付、多くの建物で採用されている軽天(ジプトーン)も設置することで、なるだけ鉄骨構造の建築物に近づけようとしました。

また、天井ふところの違いでの影響や床材の違いなども数種類替えて測定をしました。

測定は次の4つ

① 空気音遮断性能(音響透過損失)

② 床衝撃音遮断性能(軽量床衝撃音)⇒タッピングマシン

③ 床衝撃音遮断性能(重量床衝撃音)⇒バングマシン

④ 床衝撃音遮断性能(重量床衝撃音)⇒ボール

バングマシン
バングマシン
タッピングマシン
タッピングマシン

最も良い数値が出た測定結果の速報値は以下の通りでした。

◎重量衝撃音(LH) …バングマシン→L55 ・ボール→L50 ・仕様→天井ふところH=600

◎軽量衝撃音(LL) …L40 ・仕様→厚手カーペット


4. その他

「かごしま木づかい推進交付金事業」及び「CLT建築等新たな製品・技術を活用した建築物の実証事業」を活用し、以下の3つの事業を行う予定です。これらの結果については、次号以降でご報告いたします。

 

① 施工性確認試験・・・被覆材の現場施工を想定

平成28年2月11日~23日

② 歩行振動・・・・・・鉄骨構造にCLTを敷設した時の歩行振動を測定

平成28年2月25日~27日

③ 面内せん断試験・・・CLTを使った 耐震壁性能の確認試験

平成28年2月14日~23日

  

山佐木材(株)の成果報告会(3月3日)については、メルマガ臨時号等でお知らせしていますが、日本CLT協会の第4回CLTフォーラムが、その前2月26日に開催されます。こちらも是非ご参加下さい。

お申込みは 日本CLT協会HPからです。

 

 

常務取締役技術本部長 塩﨑 征男