メールマガジン第23号>バイオマスシリーズ

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★【シリーズ】バイオマスについて(21) 代表取締役 佐々木幸久

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高知県立林業学校

前回にしつぐ日記でご紹介したように、去る7月2日高知県立林業学校で講義をする機会がありました。


担当である高知県庁林務部職員のKさんは、当メルマガの愛読者である由。シリーズバイオマスで述べているような内容で喋ってくれれば良いとのことで打診があり、それなら大変気が楽と軽々にお引き受けして、あとで期日が迫ってくると苦心惨憺、何故引き受けたろうと後悔するいつものパターンです。


仏教では仏法僧を三宝というそうですが、僧に当たる存在は林業においては担い手であろうかと思います。担い手をきちんと育成しようとするのは、県の林業振興の取り組みとしては大変オーソドックスで、着実な効果的な布石であろうかと思われます。しかも林業は今需要見込みが急増、修了生の就活のためにもこの時期の設立は実によいタイミングで、経営的なセンスを感じました。

高知県立林業学校にて(2015年7月2日)
高知県立林業学校にて(2015年7月2日)

 

林業の担い手育成について 

大変良い取り組みであることを前提に、敢えて担い手育成の一般論を述べてみます。

 本来職業教育は、まず一義的には高等学校で行われる仕組みになっています。林業の担い手育成は農業高校の林科(今ではいろいろな名前になっています)が担うことになっているはずです。残念ながらそれが機能せず、高校での担い手育成は十分には出来ていないのが実態です。

 他ではそれが放置されているなかにあって、高知県では林務部局で別途林業に向けられるべき予算から工面して、担い手育成をする、せざるを得ないという現状認識に至ったものと思われます。まさに教育投資の二重払いであり、まずその不条理にも切り込んでいくべきでしょう。

 一つの方法としては文部科学省管轄の県教育庁の役割を義務教育までと、高校教育については普通課程のみに限定して、職業教育については教科内容、教師の選任も教育庁から予算ごと産業部局に移して運営した方が良いように思われます。教師の人的資源の確保や産業側の技術情報を得やすく、教育・訓練のレベルが向上し、職業人の育成には確実に貢献すると思います。


仏法僧の仏に相当するのは山であり、法に相当するのは体系的な林業手法でその集大成の林業教科書なのですが、いずれもその実態においては大きな問題を抱えています。

 

山の問題点

山については「放置林」が重大な問題として浮上しています。頻発している山地崩壊、崖崩れなど、想定外の集中豪雨が第一原因ですが、一部森林荒廃が起点になっているケースが多々有ると確信しています。

  一方木材供給について、これまで国産材使用が減少を続け年間わずか2000万m3程度に至りました。この程度なら供給体制が問題化することは決してありませんでした。しかしながら木材需要に激変が起こっています。

 木質火力発電の操業が全国で次々に始まり、従来の木材生産量並の新規需要が生まれます。そしてこれまでの国産材製材では考えられない、大規模な製材工場が各地に続々と生まれています。為替が今の状態で推移すれば、空前のスピードで国産材化が進展するでしょう。

 森林管理のコントロールが一部しか出来ていない現状国産材は、供給の急増を奇貨として管理不良林にメスを入れ、間伐を強力に進める方向に転換出来れば実に素晴らしいことです。しかしながら従来の行政の慣習からそうはならないでしょう。優良林にのみ供給を求めて皆伐を進め、結果的に当然優良林から枯渇するという危険性を抱えています。後には間伐も皆伐も出来ない大量の不良林が残ることになります。

 何とぞ要路の方々は易き途を避け、困難ながらも林業行政の主力を森林コントロールの向上に向けて人的資源を集中して戴きたいと心から望んでします。

 

林業手法の確立に向けて

現在の経済情勢や木材利用の現状を踏まえた総合的な林業手法は、我が国では確立されていません。それには様々な手法や育種学、造林学、林産学など各研究分野の成果を統合し、産業側の事情やあるべき姿も熟知しながら、林業手法として構築し、それを合理的なわかりやすい林業テキストにまとめる必要が有ります。

これは非常に大変な仕事であり、最初から完璧なものを作ることは恐らく不可能でしょう。まずはたたき台を作り、さらに衆知を集めて改訂していく必要があるでしょう。

 本来林業学校を作るに先駆けて教科書から作るべきなのですが、走りながら考える、並行して作るというのもまた現実的対処なのでしょう。担当のKさんが教科書の必要性を強く自覚しておられたので、心強く思ったことでした。


高知県庁とのご縁

いま大分県庁から西胤技師が一年研修で当社に来ていますが、十数年前高知県庁でも研修制度があって、一人一年間を遠く鹿児島県肝付町で過ごし、これが4年間続きました。 

 

今回その4人の方々にも会うことが出来ましたが、皆さん「チーフ」として責任ある立場についていて、それぞれが楽しく取り組んでいるように見受けました。

彼らの一生の友人のつもりの私も、頼もしく嬉しく思ったことです。

(代表取締役 佐々木幸久)