メールマガジン第17号>役員挨拶

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★役員からのメッセージ   常務取締役技術本部長 塩﨑 征男

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早いもので山佐木材株式会社に入社して10カ月が過ぎました。

日本CLT協会の業務で事務所にいない日が多いのですが、SAMURAI・CLT・構造設計など 担当業務については、今後も頑張って業務を進めたいと考えています。


SAMURAI集成材
SAMURAI集成材
CLT
CLT


1月1日のメルマガ 佐々木社長の話に「木造緩和から木造推奨」の時代というフレーズがありましたが、「緩和」も無かった頃、私が木構造の仕事を始めた頃からを少し振り返ってみたいと思います。


私が最初に入社した三井木材工業(株)という会社は、日本で最初に集成材を製造した会社ということで昭和30年後半までに多くの集成材の建物を建ててきたそうです。

日本の木造建築は、昭和25年の建築基準法の制定で高さ・面積の規制が法文化されましたが、その範囲内で昭和27年~36年頃の間三井木材工業は、山形アーチ材を使用した建物を全国に数百棟建てていました。しかし30年代後半新たな規制により建てられる数が激減したそうです。(これには、廉価な鋼材が大量に製造できるようになった背景もあったと思います。)こうして一旦少なくなった集成材の製造ですが、同社の大型木造建築への取り組みが、再び昭和58年4月から事業化されることとなり私の木構造への関わりも始まりました。

 

当時、法律は以前のままでしたので法のなかで、9m、13mを超えるという大規模木造を建てようとすると、まだその時にはあった法第38条という大臣認定を受けて建てるのが唯一の方法でしたし、資料と言えば表紙が布貼の「大断面木造建築物設計施工マニュアル」だけだったと思います。 

当時はこれがバイブル
当時はこれがバイブル

 

その後、丁度 山佐木材が、構造用集成材の製造を始める少し前の昭和62年(1987年)に燃え代設計という設計法が定められ、木造建築の大型化の再スタートの時期を迎えました。しかしこの背景には、海外からの強い要望があったとも聞いています。

アメリカの場合だと、国内の木材産業はご存知のように西海岸に集中しており大消費地である東海岸に持っていくより日本に持っていきたいという方針が強まったおかげ(と言っていいか?)ですが、日本の木材建築物の緩和の時代が始まったと思っています。


次の緩和のステップとしては、平成12年(2000年)の建築基準法改正での性能規定化ではないかと思っています。

性能さえ確認出来れば木造耐火建築物も可能という、現在の木造耐火建築物を可能とした法改正が行われました。

実は、これも海外の強い要望だったとも聞いてもいます。それまで建築基準法は仕様規定という前提で JISやJAS が大前提であったのですが、性能を確認できれば海外の製品も使うことが出来るということになったわけです。その頃より「国産材」という言葉は、(国産材と指定すると日本の材料と特定する為)「産地材」なる変な言葉に変わって使っていた気がします。この辺りまでは、海外の圧力の恩恵?と言っていいのかですが、木造建築物への緩和政策が進められてきたように感じます。この木造建築の可能性の拡大までは、どちらかと言えば「パッシプ」な木造建築の拡大だった気がします。


では、いつから「木造推奨」の時代にシフトしだしたのでしょうか?

社長のコメントでは、経済的な点を挙げておられました。アベノミクスにおいての

円安誘導→地方創生ももちろんあると思いますが、私見としては、もう少し前の地球温暖化→京都議定書の頃から始まっていたのではないかとも考えています。

 

京都議定書においては、日本の方針として石化燃料の抑制はもちろん唱っていますが、国内森林の育成や木造建築物への二酸化炭素の固定という提言(皆さんが今よく聞く言葉)をしました。

その後、平成22年の公共建築物木材利用促進法が制定され、行政自らが木造建築物を建てようという気運となってきています。以降は、「国産材」という言葉を当たり前に再び使いだしたり、地球温暖化・森林保全・木材利用増加・植林を目標とし、主として「杉」を対象とした発言も見られ当社も恩恵を受けていますが、CLTの開発への費用の補助や、昨年6月法案が成立した木造建築物の緩和(木三学、大臣個別認定の復活、木造耐火仕様の告示化)など、日本の森林・環境の為にと木造建築物の拡大への「アクティブ」な行動に変わってきていると感じています。


この木造新時代に当社も乗り遅れてはいけないと考えます。

12月メルマガの有馬常務のコメントにも書かれてありましたが、

  1.  杉ツーバイ材  ⇒ まさに国産材の利用拡大
  2.  杉CLTの開発  ⇒ 国産材の大量消費 木造以外への木材の構造材としての利用
  3.  SAMURAI     ⇒ 杉材の建築構造材料としての強度向上

まさに「国産材利用拡大」を目的とした政策にかなった動きをしていると思っています。

幸運にも集成材建築再開の時点にスタート台に立て、今まで業界内で30年間を過ごしてきましたが、山佐木材にこの度、席を移し次にやらなければならないと思っているのは、私のような年齢の者がいつまでも頑張り続けることではなく、若い人材へのバトンタッチだと考えています。山佐木材の次の世代を担う製造・設計・施工・開発の技術担当者に一日も早く引き継いでもらえるように、お手伝いができればと考えています。

 

やはり大切な事は、自分の仕事が好きで興味を持つ事です。確かに私も30年の間には、設計、現場、営業等で辛い事・嫌な事が無かったと言えば嘘になります。顧客や関係先の人との付き合い、現場でのクレーム、自分の失敗、工程遅れ、厳冬期の現場、猛暑の現場など色々ありましたが、辛かったけれどやっている仕事は好きでした。そのおかげで今まで楽しんで続けてこられたとも考えています。

山佐木材の若手の方に限らず、業界の次世代の担当者の方々にも、設計・施工・製造・営業によらず、「木」に関わることが、仕事だからではなく自分自身が、面白いと思って欲しいと思っています

段々 年寄めいた話になってきましたが、これからの「新木造時代」を担う若手の方々の少しでもお手伝いが出来ればと考えているこの頃です。

(常務取締役技術本部長 塩﨑 征男)