メールマガジン第17号>バイオマスシリーズ

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★【シリーズ】バイオマスについて(16) 代表取締役 佐々木幸久

  我が国林業の実力を如何に高めるか

儲かる林業はどう実現するか(3)

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短伐期林業の特徴

植林から伐採まで100~120年かける長伐期林業(施業)は、主としてヨーロッパで行われています。一方、北米やニュージーランドでは、比較的短い期間で伐採、植林を繰り返す林業を短伐期林業(施業)が行われています。北米では50年~60年、ニュージーランドでは30年前後という短いサイクルです。

短伐期林業と言えども、なるべく大径材に仕立てて、伐採時の単木材積を高めていることには変わりありません。それが伐採コストを低減し、儲かる林業の原則だからです。その単木材積も1m3と言うことはなくて、2~3m3くらいを目指しているように思われます。

このため短伐期施業を行っている林業では、一様に面積当たり植栽本数が低い特徴があります。ニュージーランドは500~800本/ha、北米は900~1100本/haと聞きました。

ニュージーランド フレッチャー社  100m3積みトレーラー 丸太30本?
ニュージーランド フレッチャー社  100m3積みトレーラー 丸太30本?

 

苗木生産

植栽は苗木を植え付ける場合と、条件によっては天然更新も行われます。親木から種が落ちてそこから自然に樹木が育っていく、大変恵まれた条件の林業もあります(天然下種更新)。長伐期林業の場合には様々な性質を持つ大量の幼木から、間伐を繰り返すことにより自ずから素性や育ちの特に悪い樹木は除去されていきます。

一方短伐期林業の場合、植え付け本数を少なく押さえますから、最初から入念に選抜された優秀な苗木を植える必要が有ります。少数精鋭ということですね。

ニュージーランドでは育種については国家プロジェクトとして、極めて大々的かつ精力的に研究が行われ、世界中から成長力や材質を元に適木の選抜が行われました。そして元々同国由来の樹木ではないラジアータパインが、国家的樹種、国木に選ばれました。更にその中でも多くの品種の育成が行われ、様々な特性や適性を持つクローン苗木が作られてきました。林業経営者は、山の条件や欲しい木材の特質から、それに適合する苗木を選抜し植林して、林業の収益性を高める努力をしています。

 

カナダはご承知のように州有林が多いのですが、大面積の州有林が入札により、民間木材会社に長期にライセンスとして伐採権が付与されます。木材会社は例えば15年というような期間の中でこの州有林の木材を伐採し、その跡地に苗木を植え付けて、一定期間育林作業をして州政府に返すことになります。写真はカナダの大手木材会社が設置運営している育種場です。

カナダWFPの苗木工場 ここで年間3000万本の苗木生産
カナダWFPの苗木工場 ここで年間3000万本の苗木生産
この女性が所長さん(品種の専門家) 持っているのがポット苗
この女性が所長さん(品種の専門家) 持っているのがポット苗

 

短伐期林業の施業

短伐期林業の場合、以下のような施業になるものと考えられます。


ha当たり1,000本植の場合

10年目  900本 除伐

25年目  600本 一次間伐

40年目  400本 二次間伐

55~60年  皆伐   


これなら地力の高い山なら、皆伐時の総材積600m3以上、単木材積は1m3を優に越えます。もしもっと地力の低い山であるなら、植栽本数を減らすことで皆伐時単木材積が1m3以上になるよう植栽計画を立てれば良いのです。

いろいろな国の林業を見ての何となくの印象ですが、長伐期林業は小規模施業にも向く、短伐期林業は大規模施業に向くような気がしています。


これからの国内林業

長伐期なのか短伐期なのか、そしてその山の地力がどうなのか、それらを勘案して単位面積当たり植栽本数を決める、この基本的なことが出来ていないことが、我が国林業経営の混迷度を深めていることは多分間違い有りません。

「成熟期に達した」と言われる我が国森林の、当初の植栽本数は、恐らく何かの見通しや根拠も無いままに、ほぼ一律に3000本植えを選択しています。この場合儲かるためには、間伐、択伐を繰り返しながら長期に育てていくしかないのです。

育林中の山を途中で皆伐すれば、単木材積が小さいから伐採コストがかかり、当然のように儲からない、儲からないから再造林はしないと言うことになります。しかも過疎の山間地では皆伐後の再造林の人手がありません。

結果としてあちこちにはげ山を作っていけば、「木材は循環型資源である」、「林業は環境貢献産業」からと多大の国公費をつぎ込んでいるのに、あっという間に人々の信用を損ない、輿論を敵に回します。

 

「林業は先進国でしか成立しない」と言われています。個々人が皆伐に走りかねないのはまあ人の情ですが、行政がそれを押しとどめ、国家百年の大計としての指導力を発揮する林業行政に転じて欲しいと切に願います。

(代表取締役 佐々木幸久)