メールマガジン第14号>役員挨拶

-------------------------------------------------------------------------
★役員からのメッセージ    専務取締役 神田 稔

-------------------------------------------------------------------------

育てるということの現在・過去・未来

「育成」とは「立派に育て上げること」と辞書にあります。

今年、大相撲で「育盛」と書いて「そだちざかり」という四股名の力士が誕生しました。新弟子検査の第二検査、体重測定67㎏を超えて合格するために、検査直前4リットルの水を飲み、体重を増やしたそうです。

自分の将来に目標を持ち挑戦した熱意に感服し、軽量な弟子が立派に育つように願った親方は「育盛・そだちざかり」とユニークな四股名を命名したのです。思わず、親方に「座布団一枚!」の一言を発したかったです。

しかしながら、初土俵の取り組みでは開始一秒で負けてしまいました。本場所で小兵がバッタバッタと大型力士を倒すという行く末を楽しみにしていましたが、残念ながら、初土俵後に引退してしまい、親方の育成の夢は叶いませんでした。


50数年前の小学校の低学年時代、山奥で育った私の日曜日の思い出は、スギの造林に欠かせないホギ採取の手伝いで杉山に行っていたことです。

その頃は「スギを育てる」という感覚ではなく、山に行くのが楽しみで、教えられたととおりにホギをたくさん採って、同じ仕事をしているオバチャンが「小さいのに感心だねぇ」と褒めてくれるのを期待して行っていたような気もします。

あの時のホギは立派に育って、柱や桁に製材されるのをじっと待っているのか、すでに住宅資材として使われているのか知る由もありませんが、現在、スギの木に関わる仕事をしてみて、今更ながら樹木の生長には、時という途方もない年月を経なければならないことを再認識しました。

また同じ頃、山の楓を掘ってきて庭の片隅に植えました。なぜ楓だったのか、幼いながらも紅葉を楽しむ風情を持ち合わせていたのか思い出しませんが、立派な育ったその木が、今は優良な椎茸栽培の場所になっています。


6年前これから引き継ぐ杉山等を考えたとき、杉の木は伐採したら萌芽更新しないので萌芽更新するクヌギ、コナラ、マテバシイの種子を休耕田に播種し、杉の伐採前に植樹しようと計画しました。

クヌギ、コナラは原木椎茸を栽培する目論見、マテバシイは薪利用、鰹節の燻製に利用と育樹の夢を描きましたが、あにはからんや移植する時期を見誤り立派に育ちすぎたとは、大失敗。トホホとくれる日々ですが播種した木は確実に生長しています。

大きくなりすぎたクヌギの苗
大きくなりすぎたクヌギの苗




その6年前に拾ってきたマテバシイの実を自宅玄関の水道で洗ったときに落ちたのが芽を出し、こんなに大きくなりました(右写真)。これを毎朝眺めて育樹のヒントにしてますが、この木はこのあと庭木になる運命にはありません。


今年も神社や公園にあるマテバシイの実をたくさん拾って冷蔵庫に保存してあります。この原稿のメールマガジンがリリースされる頃は工夫した播種も完了していることでしょうか。 そして育った苗木を山に移植した10年後20年後はすてきなシイの木林になっていて誰かが見てくれると思うと今から楽しみでなりません。



冷蔵庫から出した播種前のマテバシイの実
冷蔵庫から出した播種前のマテバシイの実

(専務取締役 神田 稔)