メールマガジン第13号>バイオマスシリーズ

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★【シリーズ】バイオマスについて(12)代表取締役 佐々木幸久

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最近木材原木相場に異変が起きています。製品は安いのに原木相場が高止まりになっているのです。

昨年も冬から春まで異様とも言える原木相場が続きました。ただし、これは理由がはっきりしています。消費税増税前の駆け込み受注によって、住宅業界は近年まれに見る活況を呈しました。この時は製品相場も高騰し、連動して原木価格も高騰しました。各地で製品の欠品が起こり、国産材が指定されていた現場でやむなく輸入材に変更されるという事例もあったようです。

あの時の需要増はせいぜい50%くらい、期間も半年前後と短いものでしたが、それでも相場は混乱を極めました。駆け込み需要の消化とともに混乱は嘘のように解消、今度は製品、原木共に価格低迷に困惑することになりました。

 

国産材マーケットは小さくその実力は未だ虚弱です。マーケットが小さいことは、波の上の小舟に似ています。ちょっとした需要の波で舟は翻弄されます。

スギよりも更に小さなマーケットであるヒノキでは更にこの現象が露わになります。ヒノキの価格相場は高くなったときも大変なものですが、底になった時はスギと同等かそれ以下の価格になった瞬間もあり、関係者は呆然とするばかりでした。


前回と違って今回の原木価格高騰は、製品安の中で進行していると言うことで、これまでに余り例のないことです。バイオマス発電が具体化しつつある事からの現象と思われますが、まだ稼働もしていないうちからこれでは先が思いやられます。


私はバイオマス発電各地での計画乱立に、ずっと懸念と恐れをもっています。

それは

  1. 林業の現状実力に比較して、発電の規模が大き過ぎる。
  2. その大きなプロジェクトが殆ど同時期(1-3年)のうちにスタートする。
  3. 電力買い取り価格が高過ぎる(特にいわゆる「未利用材」について)
  4. 殆どのプロジェクトが「発電専用」タイプであり、発電効率の高さを追い求めるために、総合的な熱の利用効率は低い。


  • 規模が大き過ぎることの問題点
  • 同時期にスタートすることの問題点

鹿児島県内で計画されている二つのプロジェクトの木材使用量は、一つが10万m3、もう一つが30万m3と言われています。合わせて40万m3で、これは鹿児島県内で現在生産されている木材とほぼ同じ量です。ちなみに県内でもう一つのプロジェクトの計画が進行していると仄聞します。

これだけの需要が数年かけてゆっくりと生まれてくれるなら、林業のためにも、そして地域経済のためにもそのメリットは計り知れないものがあると思われます。しかしながらこの1,2年の内に始まり、いきなり100%の稼働状態に入るとすれば、消費税増税時と思い比べても、そのもたらす混乱はこれまた計り知れないものがあると恐れています。

まず森林の伐り過ぎが問題視され社会問題化することが想定されます。それでも我が国にはこれらを事前に防止する手立てが無いように思われます。

また工場近郊から生産される燃料では足りずに、かなり遠隔地から運ぶことも当然想定されます。交通量の増大から、肝心の減らすべき化石燃料の使用量は増加し、派生して交通渋滞や、環境汚染、事故なども懸念されます。


  • 電力買い取り価格

未利用材利用の電力買い取り価格が1KWHあたり32円というのは、論外というべきものでしょう。

ある原木置き場(燃料のための原木ヤード)を見ましたが、明らかに製材用途に使える材料も多数混じっていました。明らかに「未利用材」の範疇を超えています。このようなまさに「主客転倒」とも言うべき倒錯した木材利用が起こりかねないのも、製材用の良質丸太を燃やしても引き合うような買い取り価格を設定した経済原則の無視がもたらす悪弊です。

この価格は私達が現在買っている電力価格の倍近くであり、その価格差がそのまま消費者に転嫁され、恐らくその額は耐え難いものになると考えられます。まさに悪法と言っても過言ではありません。


私達製材業界にとって、極めて深刻な憂慮すべき事態です。原木調達の競争に敗れて閉鎖する工場が出てくる可能性も有ります。これらはすべて「いっぺんに起こる」事から来るものであって、徐々に体制を整える分にはすべて克服出来る課題です。

従ってこれらの激変を少しでも緩和する対策を取ることが一刻も早く必要です。そしてある程度時間を掛けながらでも、「我が国林業の実力」を高める必要が有ります。それは一体何か?


それは次回に申し上げます。 

(代表取締役 佐々木幸久)