M田部長のぶらり肝付町の旅・秋の味「やまたろう蟹」を屠り食らう

 10月に入り、秋の気配が日ごと深まっております。

 街中の四十九所神社の参道では、10月15日(第三日曜日)に行われる神事「流鏑馬(やぶさめ)」の稽古が始まりました。

 朝には、高く青い空をサシバの群が渡っていきます。

サシバの鷹柱 10/1 6:30 大隅広域公園
サシバの鷹柱 10/1 6:30 大隅広域公園

 

 当地で秋風が吹きはじめると、味わいたくなるのが「やまたろう蟹」(モクズガニ)。

 大きなはさみを支える太い腕?には藻屑のような毛が密集しており、見た目はちょっとグロテスクです。しかしながら世間では、なんと「日本の上海蟹」という超高級な異名を持つ淡水性のカニです。

 

 この時期産卵のため山奥の清流から川へ下り海へと向かいます。この習性を狙って、山手の川に魚のアラなどをえさに蟹かごを漬けて生け捕りにします。だれでも採ってかまわないのですが、漁師さん同士のなわばりがあって、下手に仕掛けるとかごは川の外というはめになることも。素人さんには手を出しづらい漁ではあります。

 

 そんなこともあって、買って食べるのが経済的にも精神衛生上もベターなわけで、川上地区にある地産地消のデパート「やまびこ館」にて購入することにしました。

 甲羅の直径が6cmから10cm程度の蟹が10匹ほどはいった小かご(表示1.3kg)が1000円。雄が7,雌が3の割合でしょうか。雄に比べ雌がはるかに美味しいので、この割合ありきの価格設定なのだと納得しつつも、欲を出してほかの小かごの中も覗いたりしていると、お店の人にせかされることになるので注意しましょう。

 

 急いで家に持ち帰って大鍋に放り込み茹でる段取りを。と、わずかでも油断をすると奴らは身の危険を感じているので大脱走を試みるのであります。毛だらけの大きなはさみに挟まれないよう気をつけながら水を張り、弱火にかけます。

 

素早すぎる逃げ技をみせる蟹さん
素早すぎる逃げ技をみせる蟹さん

 

 弱火に掛けるのは、ゆっくりゆっくり温度が上がる生温かいお風呂から入っていると暴れないので、蟹の手足がばらばらに分解せず、形良く茹でるためのコツなのです。ちょっと卑怯な調理ですが。

 野生につき寄生虫がいるのは当たり前。甲羅や足が赤くなっても10分ほどは茹で続け、ゆで汁に味噌をいれる間、しばしお湯から上がって休んでもらいました。

 

ズイキの葉の上で姿良くお休みの面々
ズイキの葉の上で姿良くお休みの面々

 

 やまたろう蟹は味噌汁にしていただくのが当地のしきたりです。添える野菜はズイキ(里芋の茎のような野菜で南九州では「いもがら」という)に、薬味は刻んだ大根葉に限ると古老たちは言います。うちに大根葉がないので青ネギを代用しました。

 

味噌汁の中でしばらく煮て盛りつけ
味噌汁の中でしばらく煮て盛りつけ

 

 まずは、たっぷりと蟹のエッセンスが溶け出た濃厚な汁を飲み尽くし、さらにその汁をスポンジ状の体にため込んだズイキの小口切りを熱さをものともせずほおばり終えたあと、本命の蟹に手を掛けるのです。

 ほとんど口もきかず、手づかみでしゃぶり食い尽くす姿は他人に見せられるものではないように思われます。

 あー今年も味わえた、ごちそうさまでした。           

(次も山からか M田)