М田次長のぶらり肝付町の旅・宇宙編③

JAXA内之浦宇宙空間観測所の数多い建物をひとつひとつ見て歩くと、ここが1960年代初めにおいて、宇宙科学の実験観測所としての存在と同時に、池邊陽研究室の建築設計の実験場でもあったことがよく分かります。

そのデザインは斬新かつ大胆で、使われている建築材料も前回ご紹介したALC同様、当時の最先端のものが使われています。

 

管理センターから一番近くに位置する「KSセンター」は、小型の観測ロケットの発射ドームです。

組み立てられた観測ロケットは、ランチャ(移動式発射台)に搭載されドーム内に入り、打ち上げ方向にむけ発射姿勢をとります。

【写真1】写真手前が「ランチャ」。ドーム内にもう一台。
【写真1】写真手前が「ランチャ」。ドーム内にもう一台。

 

天蓋が開いてロケットが発射され、手前と反対側の扉から燃焼ガスが排出される仕組みです。決して大きくはないこの建物ですが、その意匠と構造の両方から並々ならぬ存在感に圧倒されます。

【写真2】観測ロケットはこの中から宇宙に向かって打ち上げられる
【写真2】観測ロケットはこの中から宇宙に向かって打ち上げられる

 

宇宙科学資料センターにかかる陸橋を渡って道なりに進むと「M(ミュー)台地」といわれる大型ロケットの発射台地が見えてきます。

ここには、ロケットを打ち上げるミューロケット発射装置、ロケットを整備する組立室、衛星を調整するクリーンルーム等、打ち上げに必要な各種の建屋があります。

 

なかでも目をひくのが組立室が入る建屋です。【写真3】

ロケットの部品は、門型クレーンを使って、手前の凹面壁パネルのドアから搬入され、組み上げられるそうです。

1920mm角、高さ(深さ)640mmの大きなアルミニウムのカーテンウォ―ルが迫力のある陰影のパターンを作っています。

バスの窓と同じほどの大きなアルミパネルの配置。緻密で大胆だと思います。

【写真3】ミューロケット組立室の入る建屋。モノクロで撮影するとアルミパネルの陰影がよく分かる
【写真3】ミューロケット組立室の入る建屋。モノクロで撮影するとアルミパネルの陰影がよく分かる

 

「建築とは、一言でいえば『光と影』による造形である。歴史的な建築は、その色を失い、またディテールが破壊していっても、その光と影による造形は失われることはない。」

宇宙編④に続く(M田)