メールマガジン第67号>現場日記

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★【特集】みやこ下地島空港ターミナル開業記念! 現場日記&完成物件 

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  沖縄県宮古島市の離島「下地島(しもじしま)」に計画された「みやこ下地島空港ターミナル」のCLT工事という大きな仕事をいただくことが決まった約20か月前、社内に下地島プロジェクトチームが編成されました。倉庫になっていた部屋が片付けられて、電話がひかれ、下地部屋と呼ばれるようになり、小城プロジェクトリーダーを中心に、試験、図面、製材、製造、加工、防腐、建て方等々、数多くの社員が関わってきましたが、先日無事に竣工いたしました。

 下地島の雑草に圧倒されたり、シロアリの元気さに驚いたり、半年以上を宮古島で暮らしたり、きれいな海に感動したり、暑かったり、寒さに弱くなったり、台風が来たり、痩せたり、太ったり、ここでは語りつくせぬことが多々あったと思いますが、関わった一部の社員に今回のプロジェクトを振り返ってもらいましたので、特集記事としてご紹介いたします。

 

物件概要

・名称「みやこ下地島空港ターミナル」

・所在地:沖縄県宮古島市伊良部字佐和田1727番地

・建築主:三菱地所様

・設計:日建設計様

・施工:國場+大米JV様(CLT工事 山佐木材)

・敷地面積:32,586m2

・施設面積:12,027m2 

・CLT使用量:1,530m3

全景
全景

出発ラウンジ棟の完成写真(屋根フラットスラブにCLTを使用)
出発ラウンジ棟の完成写真(屋根フラットスラブにCLTを使用)
チェックイン棟の完成写真(屋根にCLT・集成材を使用)
チェックイン棟の完成写真(屋根にCLT・集成材を使用)

写真提供

・三菱地所株式会社様

・下地島エアポートマネジメント株式会社様


1.竣工式に参加して

 2019年3月16日、下地島空港工事の竣工式が行われ、お招きを受けて榎原専務、小城、山田両君と共に参列した。正面入り口から入ってコンクリートの通路を抜けて出発ラウンジ棟へ。天井の構造体としてのCLTに圧倒される。そしてチェックイン棟。こちらは大きな集成材とCLTの組み合わせ。CLTの木口板が意匠として随所の壁板や、チェックインカウンターに使われている。端切れの木口板をコースターに利用したことはあったが、こんな使い方もあるのだと感心する。

 竣工式に先立って行われた「奉告祭」にも参列、緊張の中に誠に厳粛な神事であった。そして竣工式、玉城知事や宮越大臣などテレビで見かける知名の士も含め、大勢の沖縄県政財官の方々もご列席、様々な報告やご挨拶があった。パーティーではなるべく多くの方々にご挨拶やお礼を申し上げるよう心がけた。 


 

 現場関係者の方々は、工期に追われ大変な思いをされ疲れ切っておられるはずだが、やはり晴れの日、にこにことして応対、半年以上を付き合った小城君、山田君に対し温かい言葉で労をねぎらって下さった。心から感謝すると共に、彼らの活躍を心強く嬉しく思った次第。

 私たちの仕事は、元請けの「総合建設業」者(今回は国場・大米建設JV)の全体的な仕事の中で、部分的・専門的に木造部分を責任分担している。建設業法で「専門工事業」と呼ばれるものである。専門工事業のひとつ「大工工事業」が私たちの従事する職種である。私たちはこれに誇りを持って取り組んでいるが、余り表に出ることはない。起工式、落成式に出ることも比較的まれである。

 それが昨年10月の起工式にもお招きを受けて参列している。これは施工主である三菱地所様のご厚意と言っても過言ではあるまい。平成の終わり、そして私の社長として最後の竣工式になった。 

 私の木材第一の生活は、平成3年の城山観光ホテルのレストランホルトの起工式・竣工式で幕を開け、下地島空港の竣工式で幕を閉じようとしている。

 令和の御代の初日、会社の事業年度初日の5月1日に、有馬常務に社長を引き継ぐことが出来たことを喜びとしている。

(代表取締役会長 佐々木幸久)


2.下地島空港プロジェクトリーダーとして

 2017年5月の全社方針発表にて、今回のプロジェクトリーダーを拝命し、2年近くリーダーとして動いて参りました。

 今回のプロジェクトは、自分にとっても、会社にとっても初めての事が多くありました。

 その中で、全ての部署の社員の方の協力があり、開港に間に合うように工事ができた事は大きな自信となりました。もちろん、空港関連の工事関係者のご協力あっての結果だと思っております。この場を借りて、改めて御礼申し上げます。

 今回の工事は山佐木材全体のレベルアップを図ることができた工事でした。この経験を生かし、これからも頑張っていきたいと思います。

(プロジェクトリーダー/現在 製造部長 小城)

山田リーダーと小城リーダー
山田リーダーと小城リーダー

3.試験担当として

 下地島空港の構造試験などを担当しました。

 他の物件と比べて試験の種類が多く、かなり細かい所まで検証するような凝った試験もあり、研究っぽい感じがして、やり甲斐を感じました。特に木材-鉄筋の引抜試験は最適と言える試験装置があまりないのと変位計の配置が難しく、後でデータ処理に苦労しました。中にはまだ陽の目を見ていないかもしれない?なかなか画期的な試験もあって面白かったです。

 試験体の時点で接合方法、加工形状がほぼ決定するので実施工時のやり難さをこの段階で軽減できればという思いもありましたがどうだったでしょうか、今後の課題です。

 モックアップでのたわみ試験は結果が少々思わしくなかったですが、実物の試験では良い結果が見られてほっとしました。  

 関係者の皆様、試験機関の皆様色々ご面倒ご迷惑おかけしました。ありがとうございました。 

(試験担当/現在 技術開発室主任 小松)

山佐木材の工場内に実大モックアップを組み、施工性確認やたわみ試験を行いました
山佐木材の工場内に実大モックアップを組み、施工性確認やたわみ試験を行いました
下地島での防蟻試験
下地島での防蟻試験
現地でのたわみ試験
現地でのたわみ試験


4.施工図担当として

 今回の件で施工図を担当させていただきました。

 CLT使用量 1500m3を超える大型物件の施工図を担当するのは、嬉しくもありプレッシャーでもありました。特に梁間方向16mの寄棟屋根のチェックイン棟は納まりが非常に複雑で、施工図面を描いていて不安に思いましたが、建て方計画を立てた山田リーダーのもと無事に建った写真を見たときは本当に安心した事を覚えています。

 本文を書くにあたり手がけた施工図・加工図の枚数を数えたところ300枚を超えておりました。

 この全てを細部までご確認いただき、ご指摘・承認下さりました設計監理の(株)日建設計様には本当に感謝しております。みやこ下地島空港が様々な方に親しまれ、利用される施設となる事を祈っています。

(施工図担当/現在 製造部CLTチームリーダー 津曲)


5.CLT製造担当として

 初めて話を頂いた時には 心躍る勢いで『絶対やりましょう!!』と、かなりテンション高めで食いついたことを覚えています。話が進み詳細が分かっていく中で、かなりハードな仕事になりそうな予想が膨らみ、ネガティブな考えも浮かびましたが、やはり期待の方が大きかったです。(社内ではかなり楽観視しているようなイメージで扱われていたかもですが・・・)

 実際に製造が始まってみると、材料調達で苦戦はしたものの、プレス工程は順調に進み、さほど納期に追われることなく進んでいきました。

 1次加工まで担当致しましたが、弊社のパネル加工機で完結しない部分の手加工が結構ハードで、担当された方々はかなりしんどい思いをしていました。(私も5枚ぐらいは手伝ったかな~。)

 CLTの製造現場は同じ規格の物を量産することで、作業効率も良くそこまで大変な管理はありませんでしたが、現地で現場を担当された下地島プロジェクトチーム・小城リーダー(現製造部長)は気苦労が絶えなかったことと思います。

 工事も無事に竣工し、先日完成写真も見させて頂きましたが、とても素晴らしい建物で、CLTの可能性に木材業界の明るい未来が開けていくような気持ちになりました。

(CLTリーダー/現在 営業部課長 西牧)


6.現場建て方担当として

 昨年の6月中旬から現場に入り、仮置き場での材料、資材の先行入荷及びCLTの精度確認(許容を上回るものは仮置き場で調整)や施工計画に基づく擦り合わせ等を元請や協力会社関係と行い、7月下旬より現場での建て方が始まりました。

 先ずは水平屋根で中央に向かい階段状に3段階で上がっていくCLTフラットスラブ屋根の出発ラウンジ棟から施工を行い、10月中旬くらいに大断面杉集成材の寄棟造にCLT屋根を敷き込んだチェックイン棟も続きます。

 出発ラウンジ棟は、施工に際して2工区に分け、それぞれに建て方チームを配置しました。そして、その工区内でも更に小区画に区切り区画毎に施工の確認や精度管理を行いました。

 建て方は大まかにクレーン作業でCLTを敷き込んでいく敷き込み班、CLTの接合部に接着剤を注入する注入班、上下層のCLTを接着接合する為の穴を開ける穴加工班、最後にCLT上の硬化した接着剤や接合部のCLTの段差等を平滑に削り取る仕上げ班に分けました。人員配分などはその日その日の施工状況に応じて流動的に決めました。

 現場内は厳しい工程での業者が多く、やむを得ない並行作業等で建て方スペースやクレーンの配置など制限がかかり思うように施工が進まないといったこともありましたが元請や職人の方々と情報を共有していろいろなアイデアも出してもらい工期内に終わらすことができました。

 問題点もありました。長期的な湿度の影響によりCLTが膨張し、幾度となく敷き並べ作業を中断して丸鋸による幅方向の余分な膨らみの切断作業を行いました。これがかなり大変でした。厚さ210mmのCLTは表面からの丸鋸切断では半分しか届かず、ひっくり返して裏面からも切断するといった2倍の作業となりました。CLTの全長は平均10m程度なので裏表で20mとなり、その切断作業は出発ラウンジ棟とチェックイン棟を含めると60体くらいになりました。 

出発ラウンジ棟 施工現場の様子
出発ラウンジ棟 施工現場の様子

 

 チェックイン棟は大梁の合掌地組から作業に入りました。地組のメリットは地上の平ら所で組み立てを行うので安全でスピーディーな作業ができ、組立て後の寸法計測なども容易で施工精度も上がります。一方でデメリットは部材や金物等がいくつも重なり取り付いていくので重量がどんどん重くなり、それに応じた敷地、重量級のクレーンが必要になってきます。それと地組材は寝かせた状態で組んでいきますのでクレーン作業での荷揚げにおいて力が接合部など弱い部分に集中しやすく変形や破壊が起きる可能性が高くなります。

 こういったデメリットを解消するためには、綿密な建て方計画が必要となります。建て方計画を基に組み立てを行い、仮設材、養生材を合掌に取付け万全の体制で望みましたが、やはり一発目の合掌の荷揚げの際は非常に緊張しました。結果はうまくいきました。8トンもある合掌が吊り上げられスラブのアンカーボルトにスッと納まったときはほっとしました。あとの合掌の建て方も同様に行い、続いて隅木を納め骨組みが完成しました。

 CLT屋根は平側で軒から棟へと敷き込んでいき、妻側はそれとは逆に棟の方から引き上げるかたちで軒の方へ敷き込んでいきます。屋根工事は出発ラウンジ棟と重なる作業も多く職人の熟練度も増してきていましたが屋根面の急勾配上での作業はいろいろと支障がでて対策を検討しました。6寸勾配近くある傾斜では作業員が立つことさえ困難であり滑落の危険性も十分考えられたので親綱や滑り止めを一定間隔で設置して安全重視で作業の方を進めてもらいました。 

 出発ラウンジ棟、チェックイン棟の本工事は二つを通して6ヶ月以上に渡りましたが、事故や災害などが出ないように慎重な作業をして頂いた協力会社の(有)ヤマケンの皆様、忙しい中いろいろな私どもの無理難題に真摯に対応して頂いた(株)國場組、(株)大米建設の皆様のおかげで無事完了することができました。ありがとうございました。

(現場建方リーダー/現在 建設部加工建方チームリーダー 山田)

チェックイン棟 施工現場の様子
チェックイン棟 施工現場の様子

7.プロジェクト全体を通して

 下地島空港が無事に3月30日開港されましたこと、おめでとうございます。

 私は3月16日に催された竣工式に参加させていただきましたが、その数ヶ月前の状況では想像がつかないぐらいリゾート感あふれるターミナル施設になっておりました。この空港のコンセプトである「空港から リゾ-ト はじまる」、その言葉が感じられる開放感のある施設に出来上がっているのではないかと感じました。

 2017年5月のゴールデンウィークを返上して、積算、建て方の検討をしてから20ヶ月後に弊社のCLT現場施工が完了したことになりますが、心配事もありました。

 工程的な事、2m×12mの大版に接合及び防腐防蟻塗布するための作業場、ストック場所の事、地理的なことから輸送の事、現地での取り付け職人の事、等々、いろいろな検討事項はありましたが、施工図・製造・加工・現場それぞれの立場で担当して頑張ってくれた社員と、下請け業者様のご協力のおかげで、時が進むにつれて一つずつ心配事も解消され、工期的にも迷惑をおかけすることなく、安全に弊社の工事が終えることができたことをありがたく思っております。

 下地島空港ターミナル施設の屋根に弊社CLTをご採用頂いた、三菱地所株式会社様に深く感謝いたします。また設計監理された(株)日建設計様、元請けの(株)國場組・(株)大米建設JV様には色々な場面でご指導、ご協力をいただきありがとうございました。

 この下地島空港が開港したことで、下地島・宮古島に観光客が増え、ますますご発展されることを願います。

(専務取締役 榎原久夫)